東京高等裁判所 昭和35年(く)81号 決定 1960年9月05日
少年 B(昭一八・二・一五生)
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告申立の理由は、抗告人提出の抗告申立書と題する書面に記載されているとおりであるから、ここにこれを引用する。
しかしながら、本件少年保護事件記録及び少年調査記録等によると、原決定には決定に影響を及ぼす法令の違反、重大な事実の誤認等はいずれも存在しないと認められる。すなわち、抗告人は飲酒の上他数名と共同して被害者を強いて姦淫しようと企て、殊に抗告人は前後二回にわたり自ら犯行を繰り返えしたのであるが酒に酔つていたが為に未遂におわつたのであり、共同犯行者の一人は姦淫の目的を達したがそれは同人が酒に酔つていなかつた為であると認められるので、抗告人の犯情が他の共犯者に比較して必ずしも軽いとは認められないのみならず、なお、抗告人には癲癇の持病があると疑うべき十分な理由があり、家庭にあつては両親の保護、指導能力が欠けていることが窺われるし、抗告人自身も平素飲酒、喫煙を好み、素行も良好でなく、その性格も矯正を要する点が多く、交友関係に至つては全く不良であるといわなければならないから、かかる少年に対してはこれを単なる保護観察に付するのは適当ではなく、適当な少年院に収容してその補導、矯正をなさなければならないとした原決定は相当であるといわなければならないから、他の共犯者が保護観察に付されたに止まるのに抗告人のみ少年院に送致されたことが公平を失するという主張は理由がない。また、抗告人には前記の如き疾病があることが疑われる以上、これを医療少年院に送致すべきものとしたことも当然の措置であるから、原決定の処分には何らこれを不当とすべき事由は存在しないというべきである。
これを要するに、原決定には何らの瑕疵も存在せず、本件抗告は全くその理由がないから、少年法第三十三条第一項に則り、本件抗告を棄却すべきものとし、主文のとおり決定する。
(裁判長判事 三宅富士郎 判事 東亮明 判事 井波七郎)