東京高等裁判所 昭和35年(ネ)11号・昭35年(ネ)68号 判決
本件物件の価格が当時金二百五十万円位であつたことは、控訴人等の等しく認めるところであるが、控訴人張は前記金員の貸付に当り弁済期を一ケ月後とする極めて短い期限を付した上、債務者をして期日に債務の弁済をなし得ないときは、僅か七十万円の債務のために右の如くこれに数倍する価値ある物件を弁済に代えて直ちに債権者に取得させることを約諾せしめたのであつて、債務者晃等がその頃負債整理資金の調達に迫られ、従つて金融を得るためには実際上極めて不当な条項でもこれを甘受せざるを得ない窮境に在つたこと(当審証人松井光吉の証言によると、控訴人張においても控訴人晃等の金借目的が主として負債整理にあることを知つていたと認められ)るを併せ考えると、見方によれば、控訴人張は債権者としての優越的立場を利用し、債務者の窮迫に乗じて代物弁済の形で著しく過当な利益の獲得を所期したものと推測することもできるのである。果して然りとすれば、右代物弁済に関する約定は、社会観念上容認し難い暴利行為として、民法第九十条に照らし無効といわざるを得ない。
(二宮 奥野 渡辺一)