大判例

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東京高等裁判所 昭和35年(ネ)1801号 判決

一般に財産権侵害の場合に、これに伴つて精神的損害を生じたとしても、前者に対する損害の賠償によつて後者も一応回復されたものと解するのが相当であるけれども、時として単に財産的損害の賠償だけでは到底慰藉され得ない精神上の損害を生ずる特別の場合もあり得べく、他人が深い愛情を以て大切に育て上げて来た高価な畜犬の類を死に致らしめたようなときは正にこの例であつて、被害者は仮令畜犬の価額相当の賠償を得たとしてもなお払拭し難い精神上の苦痛を受けるのは当然であり、これはもとより当事者の予見しうべきところであるから、控訴人は被控訴人がジミーの死亡により蒙つた精神上の損害に対する慰藉料をも支払うべき義務ありといわなければならない。当審証人鈴木はついの証言及び同証言により成立を認めうる甲第四号証の十、第八号証の一、二によれば、被控訴人はジミー負傷後直ちに治療費九千円を支出して獣医師の許で十分の手当を尽くし、その死亡後埋葬料三千円を払つて手厚く回向院に埋葬した事実を認めうべく、これと前記の如きジミー死亡に至るまでの経過を参酌すれば、控訴人の支払うべき慰藉料額は金三万円を以て相当と認める。

(二宮 奥野 渡辺一)

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