大判例

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東京高等裁判所 昭和35年(ネ)1975号 判決

まず、控訴人のなした訴の変更が適法か否やについて判断する。控訴人が被控訴人に対し、本件建物の明渡を求めていることは終始一貫変りないが、原審においては、その請求原因として、本件建物の占有権に基き被控訴人の前占有者訴外山崎仁吉および米山周夫が本件建物に対する控訴人の占有を不法に侵奪したとし、これを理由として、侵奪した占有の承継人であるという被控訴人に対し占有回収を求めてきたところ、当審において、右占有回収の訴が認められない場合に備えて新たに賃借権に基き(賃貸人に代位し、または、賃借自体)その明渡を求めるに至つたことは本件記録に徴し明かである。控訴人のなした右請求原因の変更は、本件建物の返還を求める点では終始変りなく、しかも控訴人が本件建物を占有することを前提として本件訴訟を維持してきたことも本件訴訟の経過に徴し明かである。賃借権は目的物を使用収益する権利として目的物に対する占有を伴うものであるから、その目的物を占有することが、一面賃借権行使の態様となり、他面占有権成立の基礎ともなるもので、賃借権を理由とする本権の訴と右賃借権に基く占有を根拠とする占有権の訴とは請求の目的物について共通するものがあるので、その請求の基礎において同一性を失わないものというべきである。従つて占有権に基く占有回収の訴の理由のない場合に、賃借権に基く本権の訴に変更することは許されるというべく、又このため著しく訴訟手続を遅滞せしむべき事情は本件では認められないから、控訴人の右変更は適法というべく、従つて、請求の基礎に変更があることを理由として訴の変更は許されないとの被控訴人の主張は理由がない。

(薄根 元岡 小池)

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