大判例

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東京高等裁判所 昭和35年(ネ)2684号 判決

次に控訴人等は本件のように売買委託の解除があつても、それが仲介の途中であり、控訴人等の責に帰すべき事由によるものでない上に被控訴人等の所期の契約が成立した以上、控訴人等は受任者として相当の報酬を請求できると主張するところで、仲介業者が宅地建物の売買の仲介を委託された場合に報酬の点について特約をしない場合でも、仲介業者が仲介委託に基いて仲介の労をとり、これによつて委託者との間に委託関係の存続中に、委託をした売買契約が成立した場合には、仲介業者は委託者に対し相当の報酬を請求し得る趣旨の委託契約であつたものと解するのが相当であると同時に、また、本件におけるように委託に基ずき仲介業者が仲介の労をとつたのであるが値段の折合いがつかなかつたことなど売買の条件が売主と買主との間に一致をみず、売買は不成立に終り、仲介の労も結局徒労に帰し仲介は不成功に終り、従つて仲介の委託も自然に解除となつたときは、特別の事情がない限り、その不成功が特に仲介業者の責に帰すべき事由があつたという程のことはないにしても(民法第六四八条第三項)仲介業者は有償委任であるということに基ずき委託者に対し、その履行の半途において委託事務が終了したものとして、その既になした仲介の履行の割合に応じて報酬を請求し得る趣旨の委託ではないものと解するのが、現在における不動産取引の委託に関する社会の一般観念に適合するものといわなければならない。

控訴人等は右のとおり仲介は一応不成功に終り、委託は解除となつたのであるが、その後に売却の委託者と買受の委託者との間の直接交渉によつて売買が成立したから、相当の報酬を請求し得るものであるというのであるが、前記のとおりこの直接取引は特に仲介業者を除外して売買しようとする意図を以つて委託を解除した結果のものではなく、控訴人等の仲介によつては売買の条件が一致せず、そのため仲介は不成功に終り、その後になつて改めて被控訴人等の間に売買の直接交渉が新らしく開始し、値段の交渉等売買条件の折合ができ売買が成立するに至つたものであつて、このような場合に仲介業者が最初売主と買主との間に仲介の労をとつたことがあるという理由だけで、相当の報酬を請求し得る委託の趣旨であつたと解すべき一般の取引観念やその他の根拠を見出すことはできない。

しかも前記のように本件仲介依託の解除は自然の成行に従つたもので、被控訴人間の売買は特に控訴人等を排してしたものではなく、その売買の成立と控訴人等の仲介の間には直接の因果関係は存しないのであり、これらの事情と原審の説示した仲立行為の本質に鑑みるときは、控訴人等と被控訴人等間の仲立契約が委任ないし、準委任の関係にあるとしても民法第六四八条第三項の適用ないし準用はないものと解するのが相当であるからこの点についての控訴人等の主張も理由がない。

(薄根 元岡 小池)

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