東京高等裁判所 昭和35年(ネ)2879号 判決
控訴人は、その主張の各論文は弁護士としての控訴人が弁護士の使命達成のために発表するものであるから当然被控訴人の機関誌に掲載すべきものであり、この論文掲載請求を棄却した原判決は、憲法第九条第二一条弁護士法第一条に違反する、また原判決は憲法第七六条第三項にも違背している(昭和三六年六月七日準備書面)というのである。しかし、この問題とされている論文が、弁護士法第一条が規定している弁護士の使命を達成するための論文だとしても、被控訴人がその会員である弁護士から弁護士法第一条の使命に合致する主張、意見の掲載を求められた場合、控訴人のいうように被控訴人において当然にそのままその機関誌にこれを掲載しなければならないものでありそのような法律上の義務があるということは容易に首肯し得ないところであつて、これをそのままに掲載しないからといつてそのことが直ちに弁護士の使命を蹂躙したり、これを否定したりするものとはいえない。また、本件の論文の掲載請求を棄却した原判決が、控訴人のいうように、前記の憲法の各規定に違背しているものとも解することはできない。およそ客観的に正しい又は真なる主張、意見であつてもこれを機関誌に掲載しないことが必ずしもそれを否定することにはならないのと同様、控訴人主張の論文中の論旨がすべて正論であり、人をしてよく首肯させるに足りる内容のものだとしてもこれを被控訴人の機関誌に掲載するかどうかは別問題であつて、これを掲載しないことが前記のとおり弁護士たる控訴人の使命を蹂躙又は否定することにはならないから、控訴人主張の論文を被控訴人の機関誌「自由と正義」に掲載しないことをもつて弁護士法第一条に違反するということもできない。
(薄根 元岡 小池)