大判例

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東京高等裁判所 昭和35年(ラ)175号 決定

本件記録に添付された東京地方裁判所昭和三十四年(ル)第一、一二三号接収貴金属返還請求権の差押命令申請事件記録によれば、本件差押命令には差し押うべき債権として、接収貴金属等の処理に関する法律(昭和三十四年法律第百三十五号)により債務者が銀の地金及び製品につき第三債務者に対して有する返還請求権、とのみ表示されていることが明らかである。ところで、同法律第五条第一ないし第四項をみるのに、その各項ごとに返還を請求し得る者及び返還請求権の目的物の要件、返還を請求し得べき期限等につき別個に規定してあるから、それぞれ別個の請求権を規定しているものというべく、本件差押命令が単に前記のように記載したのでは、差し押うべき債権の表示として特定を欠いているものといわなくてはならない。

この点について、抗告人は、債務者は連合国占領軍に銀の地金及び製品を接収されたものであつて、かゝる者として昭和三十四年七月二十七日附及び同年十月二十八日附で大蔵大臣に対し前記法律に基く返還請求をしているから、該返還請求権は差し押えられ得る程度に特定性を有する、と主張しているが、本件差押命令は、いずれも抗告人主張の右返還請求の日の前である昭和三十四年六月十七日の申請にもとづき、同年七月七日に発せられていること、前示記録に徴して明らかであつて、さような特定の要件たる事実は、本件差押命令において明らかにされておらず、そして、差押の目的たる債権は差押命令自体において明確にされていなくてはならないと考うべきであるので、本件差押命令は不適法なものとして、とうてい取消を免れない。また前記要件を明らかにしない右差押命令申請は許すべからざるものであつたといわざるを得ない。

(内田 鈴木 入山)

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