東京高等裁判所 昭和35年(ラ)558号 決定
相手方提出にかかる疎明資料によれば、昭和二十八年五月二十三日本件家屋につき、債権者抗告人債務者佐々木三郎間の横浜地方裁判所昭和二十八年(ヨ)第二七九号不動産占有移転禁止の仮処分決定に基く基行がなされた当時、相手方が賃借人として六畳間を除く階下の部分を占有していた事実を認めうるもののようである。しかし右仮処分執行調書を見るに、相手方は右執行に立合いながら進んで執行吏に対し、自己がその部分を独立して占有している旨主張して執行を拒む態度に出なかつたため、執行吏は家族、雇人等が同居していても、本件家屋は全部債務者佐々木三郎の占有にかかるものと認定した上、これを執行吏の保管に移し、現状を変更しないことを条件に債務者に使用を許す旨を告げて仮処分の執行をしたことが明かである。このように本件家屋は仮処分執行の結果執行吏の保管に帰し、執行吏が直接にこれを占有するに至つたもので、相手方において仮処分前より有する占有権に基き第三者異議の訴を提起して右執行を排除し、その占有を回復する措置を採らなかつた以上、本案判決の確定と共に本執行の段階に移行した際、今さら自己の直接占有にかかることを主張して執行を拒むことはできないものというべきである。従つて相手方が右執行に対し他の手段により救済を求めるのは格別、執行方法に関する異議の申立をなしうる限りではないから、右異議申立に伴う強制執行停止申請は許すべからざること多言をまたない。
(二宮 奥野 渡辺)