東京高等裁判所 昭和35年(ラ)658号 決定
しかして記録中の東京高等裁判所昭和二十九年(ウ)第三五一号事件の仮処分決定正本(写)及び仮処分執行調書謄本(写)によれば、前記仮処分の内容は「債務者(日本興業株式会社)の別紙目録記載の建物に対する占有を解いて債権者の委任した東京地方裁判所執行吏にその保管を命ずる。執行吏はその現状を変更しないこと及び改築増築工事を施行しないことを条件として債務者にその使用を許さなければならない。但しこの場合においては、執行吏はその保管に係ることを公示するため適当の方法をとるべく、債務者はこの占有を他人に移転し、または占有名義を変更してはならない。」というのであり、右決定に基き東京地方裁判所執行吏は昭和二十九年六月三十日前記建物に対する右債務者の占有を解きこれを執行吏の保管に移す趣旨の仮処分の執行を了したことが認められる。従つて右仮処分の執行そのものは既にこれによつて終了したものというべく、ただ右執行の効果はなお存続しこの意味では執行は継続しているということができこれに対し第三者異議の訴を提起することもできるけれども、右のように執行吏の保管に移した後においては執行行為そのものが引続き行われることはあり得ないから、執行処分の取消はあつても、執行の停止ということはあり得ないといわなければならない。従つて本件におけるような執行停止の申立はこれを容れる余地はなく、これを認容した原決定は取消を免かれない。なお本件の如く民事訴訟法第五百四十九条第四項第五百四十七条第二項に基く裁判に対し右規定に定める要件の存否を争い不服の申立をすることができるかどうかについては、その裁判が本案に附随し一時の処置を定める性質のものであることに鑑み疑問とされるところであるが、この点についていずれの結論をとるにしても、仮処分命令の本来の執行は既に完了した後、従つて当該仮処分命令の執行が新に附加される余地なきに至つた後に同仮処分の執行を停止することは殆ど意味をなさずもちろん許されないから前記の如き理由で抗告を容れることはこれを妨げないものと解される。(附言、その後当該執行吏の占有を侵した第三者等に対する占有の回復は前記仮処分の執行としてみないで別途考究さるべき問題と思われる
(梶村 岡崎 安岡)