東京高等裁判所 昭和35年(行ナ)148号 判決
原告が昭和二九年九月一八日特許庁に対し、別紙第一記載の本願商標について第四類石けんを指定商品として、その登録の出願をし、ついで原告主張のとおりの各日にその主張のとおり拒絶査定、抗告審判の請求、審決、その謄本の送達がそれぞれされたことおよびその審決の理由が原告主張のとおりであることについては当事者間に争がなく、本件審決における引用商標が右審決の理由に示されたとおりのものであることは、成立について争のない甲第三号証により明らかである。
引用商標は、ただ「寶塚」の漢字を縦書きにしてなる文字商標であるから、その外観、称呼、観念は、「宝塚」「タカラヅカ」であることが明らかであり、また、第四類石けんを指定商品とするものである。したがつて、本願商標と引用商標との類否は、両者が外観において類似でないことは論をまたないところであり、指定商品が同一である以上、本願商標から「タカラヅカ」「宝塚」の称呼または観念が生ずるかどうかによつて決せられる。そこで、この点について考える。
本願商標は、別紙第一記載のとおり、古代ギリシヤなどで用いられた楽器「リラ」と認められる図形を描き、その楽器には同心状をなすわく(フレーム)のちようど中心に当たるところに「O」の文字が来るようにゴシツク体で「TOC」のローマ字が横書きにされ、また図形の下部に当たるわくのなかには楷書体で「宝塚歌劇」の文字を左から右へやや弧状におさめ、その下部にこの楽器とほぼ等しい大きさの「寶」および「塚」の文字がはつきりした普通の活字体で左から右へリラの図形とほぼ正三角形をなすように配列され、また、この図形の上部に「リラタカラヅカ」の片仮名文字を、「寶塚」の下部に「LYRATAKARAZUKA」のローマ字を、それぞれ「寶塚」の文字より小さい文字で左から右へ横書きにしてなるものである。したがつて本願商標は、「リラ」の図形(TOCおよび宝塚歌劇の文字を含む。)および「寶塚」、「リラタカラヅカ」、「LYRATAKARAZUKA」の各文字の複合からなる商標である。そして、その各部分のうち、「寶塚」の文字は、ほぼ中央にきわめて読み取りやすくかつ明確に表示されていて、他の単位である比較的に細い線で描かれたリラの図形や比較的に小さく同一の大きさの字で七字または一四字を接着して、一列に配列してなる「リラタカラヅカ」、「LYRATAKARAZUKA」の文字に比しておとらず、独立して十分みる者の注意をひきやすい部分として構成されている。これに、「宝塚」がそれ自体としてはつきりした意味をもち一般に親しみやすいものであることはいうまでもなく、しかも、本願商標がひろく一般的な取引者需要者をもつと考えてよい石けんを指定商品としているものであつて、このような者の間において「リラ」と「宝塚」とが必然的に観念として結びついたものと認められないことを考え合わせると、本願商標から「リラタカラヅカ」のほか、「タカラヅカ」「宝塚」の称呼、観念が生じうるであろうことは、容易に考えうることである。本願商標からは「リラタカラヅカ」の称呼、観念のみが生じ、「タカラヅカ」「宝塚」の称呼、観念の生ずる余地がないとする原告の主張は、その主張する諸般の事情を考慮しても、とうてい採ることができない。
右のとおりである以上、本願商標が引用商標と「タカラヅカ」「宝塚」の称呼、観念においてたがいに類似であつて旧商標法第二条第一項第九号に該当し登録すべきものでないとした本件審決は、相当であり、その取消を求める原告の本訴請求は、理由がない。
〔編註〕 本件に関する商標は左のとおりである。
原告の出願商標
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引用商標
登録商標第139808号
(大正10年12月27日登録)
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