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東京高等裁判所 昭和35年(行ナ)6号 判決 1960年4月07日

原告 中島与市

被告 特許庁長官

主文

本件訴を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

理由

原告の本訴請求は、特許庁昭和三三年抗告審判第三〇四三号実用新案出願拒絶査定に対する抗告審判請求事件につき、特許庁が昭和三四年一二月二二日にした審決を取り消すとの判決を求めるものである。

ところで、職権を以つて調査するに、特許庁が実用新案法第二六条、特許法第一二八条ノ四第二項の規定により当裁判所へ送付してきた右出願及び抗告審判請求事件記録によれば本件出願は、当初中島与市(原告)が単独でしたのであるが、原告は松山茂三に対し、本件実用新案の登録を受ける権利の一部を譲渡し、昭和三三年一〇月六日特許庁に対し、出願人名義変更届を提出し(この点については、右記録中、出願人名義変更届及びこれに添付の譲渡証書参照)、爾来右両名が共同出願人として、審査及び審判を受け、本件審決も右両名に対してなされたものであること、なおその審決は、右出願が実用新案法第三条第二号に該当し、同法第一条の登録の要件を具備しないものであるとの理由により、抗告審判の請求を排斥したものであること、をそれぞれ認めることができる。

ところで、右に認定したような場合、右審決に対する不服の訴訟において、審決を取消すべきか否かは、登録を受ける権利を共同して有する者全員に対し、合一にのみ確定すべきものでその訴は、右権利者全員が共同して提起することを要するものと解すべきである。

しかるに、本件訴は、中島与市一人が原告となつて提起したものであることは訴状によつて明かであるから、当事者適格を誤つた違法がある。そして、前記特許庁の記録中の郵便送達報告書によれば、本件審決書謄本が前記松山茂三に対して送達されるのは、昭和三五年一月一二日であることが認められるから同人の本件審決に対する不服の訴の出訴期間は、同年二月一一日を以て満了したものであるところ、同人からは、現在に至るも右訴の提起のないことは、当裁判所に顕著な事実である。して見れば、松山茂三はもはや右訴を提起することを得なくなつたものであるから、本件訴の前記欠缺は、補正するに由なきものといわなければならない。

よつて、民事訴訟法第二〇二条により、口頭弁論を経ないで本件訴を却下すべきものとし、訴訟費用につき、同法九五条第八九条を適用し、主文の通り判決する。

(裁判官 内田護文 鈴木禎次郎 入山実)

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