東京高等裁判所 昭和35年(行ナ)64号・昭35年(行ナ)65号 判決
一 請求原因第一、二項の事実については、当事者間に争がない。ところで、原告の商標(一)「BULL-DOG」および同(二)「ブルドツグ」の称呼観念がブルドツグであることは疑の余地がないところであり、本件においては、これらの商標と引用商標との類否が争点であるから、まず引用商標からブルドツグの称呼観念が生ずるかどうかについて考える。
二 引用商標は、別紙第一に示すとおり、中央に大きく顕著につぎのとおりの動物の頭部の図を描き、この図形の周囲の上部に「ALLSPORTING GOODS」の文字を、その周囲の下部に「SEIKI」の文字を、文字全体が円形をなすように書いたものであり、運動遊戯具を指定商品とする。そして、右動物は、引用商標の図形に徴し、右指定商品の需要者取引者を含む一般世人の通念上、ブルドツグと認識するのが至当である。ことに、これが幅のある頭部、平たい頭がい、張り出したほほ、たるんだほほの皮、幅の広い口、短く平たい耳を持ち、顔はきわめて短く、鼻にあたる部分が口よりひつこんでいて、全体として猛しい顔付で、太い首にはびようを打つた幅の広い首輪をしているものとして描かれていることは、一般世人が、ただちにこれをブルドツグと判断するに足りる特徴を十分に備えているものということができる。そして、これにブルドツグ犬がわが国で十分ひろく知られた犬種であることおよび右図形が引用商標の構成中圧倒的顕著でその要部と認められることを考え合わせるときは、厳密にいえば図形上ブルドツグの特徴の描出に幾分十分でないところがあるとしても、引用商標からブルドツグの称呼観念が生ずるとするのが至極当然であり、少しも疑をいれない。原告主張のように「セイキ」の称呼等に限られるとすることはできない。引用商標の図形上の動物は正体の知れない分類不能の動物であり、引用商標からはブルドツグの称呼観念は生じないとの原告の主張が、とうてい認めえないことは、以上の認定に徴して明らかである。なるほど、鑑定人原田知明の鑑定の結果によれば、右図形の動物が犬であるかどうか、ブルドツグ種のものかどうか正確に判定し難いとされているけれども、右は、その全体の趣旨に徴し、ブルドツグの細部の特徴を熟知しているものが右の図形の動物を専門的に厳密に分析し判断した場合の結果であると認められるから、これをそのまま、指定商品運動遊戯具の需要者取引者の間において簡易迅速に行われる商取引上、商品の出所を指標しその誤認混同を避けるために用いられる商標の称呼観念の判定について採用することができないことはいうまでもない。
三 ところで、引用商標の指定商品は第六五類運動遊戯具であり、原告の商標(一)の指定商品は同類玩具および運動遊戯具、同(二)の指定商品は同類運動具であるから、引用商標と原告の商標(一)および(二)とは、指定商品運動遊戯具ないし運動具において少くとも牴触し、以上のとおり称呼観念において類似であるので、いわゆる類似の商標である。したがつて、原告の商標(一)および(二)の登録は、旧商標法第二条第一項第九号に違背してされたものといわなければならないから、同法第一六条第一項第一号により牴触する右指定商品についてこれを無効とすべきものとした本件各審決は、いずれも相当であり、これを取り消すべき違法の点を見いだすことができない。よつて、右各審決の取消を求める原告の本訴請求は、外観の類否について考えるまでもなくいずれも理由がない。
〔編註〕 本件に関する商標は左のとおりである。
別紙第一 (引用商標)
登録第467520号
<省略>
昭和29年1月18日出願
昭和30年1月13日公告
昭和30年6月30日登録
指定商品(旧商標法施行規則第15条)
第65類 運動遊戯具
別紙第二
(一)
登録第477771号
<省略>
昭和30年8月10日出願
昭和30年11月21日公告
昭和31年3月10日登録
指定商品(旧商標法施行規則第15条)
第65類 玩具及び運動遊戯具
(二)
登録第514260号
<省略>
昭和32年6月26日出願
昭和32年10月10日公告
昭和33年2月18日登録
指定商品(同 上)
第65類 運動具
連合商標登録番号 477771