東京高等裁判所 昭和36年(う)109号 判決
被告人 高橋晴喜 外一名
〔抄 録〕
記録を精査して本件犯行の態様を検討してみると、被告人らは原判決説示のごとく、原判決千葉製鉄所構内酸素工場西側において同所酸素課長古谷正一管理にかかる銅製酸素圧縮機吐出管三本(計約三五〇瓩)を盗み出そうとして、これを運びよくするため、その存置場所において用意の金切鋸をもつて九本に切断し、これを八〇〇米離れた同製鉄所の外柵附近まで搬出し、内七本を構外に出し、残二本を柵外に出しつつあつたことが、原判決挙示の証拠によつて認められるところである。しからば、もはや右盗品は全部被告人らの実力支配内に移つたものということができるので、窃盗行為は既遂の段階に達したものというべきであつて、よしや江幡弁護人所論のごとくその内二本がまだ構外に運び出されていなかつたとしても、このことの故に盗品全部が被告人らの実力支配内に移つたことが否定されて全部につき窃盗罪の既遂をもつて論ずる妨げとなるものではないというべきである。であるから、原判決には所論のごとき事実誤認の廉はなく、江幡弁護人控訴趣意一、の所論は採用するわけにはいかない。
(尾後貫 堀(真) 堀(義))