大判例

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東京高等裁判所 昭和36年(う)391号 判決

被告人 島田敬一

〔抄 録〕

刑事訴訟法第二五五条第一項は、「犯人が国外にいる場合又は犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達若しくは略式命令の告知ができなかつた場合には、時効は、その国外にいる期間又は逃げ隠れている期間その進行を停止する。」と規定するのであつて、犯人が国外にいる場合と犯人が逃げ隠れている場合とでは、公訴の時効の進行停止の条件に差異あるものと解すべきである。すなわち、犯人が逃げ隠れている場合は、公訴の時効が進行を停止するには、検察官が公訴提起の手続をとつたことが必要であるが、犯人が国外にいる場合には、かかる手続を要しないのはもとより、単に犯人が国外にいるということ自体で無条件に公訴の時効が進行を停止するものであることは、右規定の文理解釈上疑を容れないのである。犯人が国外にいる場合には、犯人が国内にいる場合と異り、訴追機関が捜査の端緒をつかみ、犯罪を確知する機会が乏しく、また、捜査の端緒をつかんでも、捜査の遂行は、不可能であるか又は極めて困難であつて、公訴権の行使が不可能に帰するか又は多大の困難を伴うものであるから、犯人が国外にいる場合には、特に他の場合と区別することとして、右の規定が設けられたものと解せられるのである。従つて、所論のように、犯人が国外にいる場合においても、犯罪及び犯人の確知があるにかかわらず犯人が国外にいるため有効に公訴権行使の手続を行うことができない場合にのみ公訴の時効が進行を停止するものと解すべきいわれはない。それゆえ、検察官が本件の犯罪及び犯人を覚知しなかつたとしても、国外にいた被告人らについて、公訴の時効が完成すべきはずはない。所論は、すべて独自の見解に基くものであつて、論旨は、理由がないものといわなければならない。

(尾後貫 堀真 堀義)

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