東京高等裁判所 昭和36年(く)134号 決定 1962年2月16日
少年 T(昭一七・二・二七生)
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告の趣意は末尾に添付した少年提出の「抗告申立について」と題する書面記載のとおりである。
論旨は要するに、原決定1の(1)の事実につき、抗告人は背広を取つておらず、退職をするときにオーバーを着て出てしまつたのであり、1の(2)の事実に関しては、テレビジョンの質入をしてやつただけで窃盗には関係せず、2の強盗についてはナイフで脅した事実はなく、原決定には重大な事実の誤認があることを主張するものと解される。
よつて記録を調査すると、原決定の1の(1)においてまさに抗告人の認めているオーバーの一着の窃盗だけを認定し背広については何もふれていないのであるし、記録中の司法警察員に対する抗告人(昭和三六年一〇月二五日付)、○口○○(同月三〇日付)、○木○夫の各供述調書、斎藤憲三郎の質取始末書によれば、抗告人が○口○子こと○口○○と共謀して原決定1の(2)のとおり○木○夫の不在中テレビジョン一台を盗み出した事実を、また司法警察員に対する抗告人(同月一八自付)、○口○○(同月一二日及び一八日付)、○田○子の各供述書によれば、抗告人が原決定2のとおり○田○子にナイフを突きつけて脅迫して二〇、〇〇〇円を強取した事実を、いずれも十分に認めることができるので、原決定のこれらの事実には何の誤りもない。
なお抗告人は右三点の外にも自首の有無、大阪の旅館で金を払わなかつたこと、実母を脅迫して金を取つたことなどについても争つているが、それらは原決定が全然ふれていないところであるから、ここでは判断をしない。その他記録を精査しても、原決定には影響を及ぼす法令の違反、重大な事実の誤認または処分の著しい不当の点はない。
よつて本件抗告は理由がないので、少年法第三三条第一項、少年審判規則第五〇条に則りこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。
(裁判長判事 小林健治 判事 松本勝夫 判事 太田夏生)
別紙
抗告申立てについて
昭和三十六年十一月二十四日東京家庭裁判所石崎四郎裁判官係で中等少年院送致決定を受けたのでありますが今度左記の事由により抗告を申立てますので宜しくお願いします。
記
一、私は昭和三十六年十月二日新宿区×丁目○○ビルの○田さんの家に入り現金二万円を敢つた事に対して私は池袋署に自首をして出ましたが警察官は私を捕えた様に話していますが私は池袋署に十月十日に自首をして出ました。
○田さんの家に入つた時ナイフをつきつけた事は有りません審判の時お話しが有りましたがもう一度良く調べて下さい私は心臓が悪いのでそのような気持にはなれません
一、窃盗で十月に調書を取られましたが私は全々関係が有りませんそれは○木○夫様のテレビを窃取したと審判の時話しが有りましたが私はその時テレビを質店に入れて下さいというので入質してやりました
調書を取られた時私は○口さんに罪をきせまいとして嘘の事をいいました
一、大阪に行つた時私は旅館に泊りお金がないので払わず死んでお詑びすると審判の時話しがありましたがそのような事実はありません
一、窃盗で二月の始めに○沢○夫様方よりオーバーと背広を窃取したと話が有りましたが私は背広は取りませんが私が退職をする時にオーバーを着て出てしまつたのです
一、実母の所にいつて脅迫してお金を取つたと話が有りましたがそのような事をしたおぼえは有りません
以上の埋由でありますのでもう一度裁判を
やりなおして下さい