東京高等裁判所 昭和36年(く)24号 決定 1961年5月30日
少年 F(昭一七・一・二七生)
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告の趣意第一点は、原裁判所が事実を誤認して少年に非行事実ありとして中等少年院送致の決定をしたことは不当であると主張するのである。即ち原裁判所は少年がKを脅迫し、二回に亘り同人より背広服上下一着及び皮ジヤンバー一着を喝取したと認定しているのであるが、少年はKに依頼し質草にするため右洋服等を借受けたもので、同人を脅迫してその交付を受けたものでない、と主張するのであるが、記録によれば少年は検察官に対しても、また家庭裁判所裁判官に対しても任意右犯行を自認しており、Kも志村警察署巡査田中島義に対し、右自白に照応する恐喝被害の顛末について供述しており、原裁判所が認定した右非行事実は証拠上明瞭であつて、些も誤認の疑は存在しない。 また抗告趣意の第二点は、少年を中等少年院に送致する処分は不当であると主張するのであるが、記録明瞭な少年の非行歴、その交友関係、家庭環境等を綜合して勘案すれば、少年に対しては在宅保護をもつてしては到底その補導に万全を期し難く、その非行癖を矯正しその健全な育成を図るためには、相当期間中等少年院に収容する必要を認めるのであつて、原裁判所の決定は相当である。
よつて本件抗告はその理由がないから少年法第三十三条第一項によりこれを棄却すべきものとして主文のとおり決定した。
(裁判長判事 兼平慶之助 判事 関谷六郎 判事 小林信次)