大判例

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東京高等裁判所 昭和36年(ネ)1857号 判決

(四) 仮に、本件土地につき埋立契約が認められないとしても、控訴人半高明は被控訴人小高桂太郎のためにその所有地二〇〇坪三合六勺を埋立て、その費用残額金二八万五四〇円、被控訴人小高勝利のためにその所有地二六一坪四合二勺を埋立て、その費用残額金三七万二、一三〇円の有益なる費用を支出したので、事務管理により被控訴人両名に対し、右各金額相当の費用償還請求権を有する。少くとも被控訴人両名は法律上の原因なくして控訴人半高明の費用の支出並びに労務により右各金額相当の利益を受け、反面控訴人半高明は右各金額相当の損失を受けたのであるから、被控訴人両名に対し、右各金額相当の不当利得返還請求権を有する。よつて、控訴人半高明は昭和三七年五月二三日、第三回口頭弁論期日において、被控訴人両名に対する前記各事務管理による費用返還請求権乃至不当利得返還請求権を自動債権とし、被控訴人両名の控訴人半高明に対する本件土地使用による各損害賠償債権と対等額において相殺する。

(理由)

四、次に、被控訴人らは、控訴人らの前記(四)の抗弁も時期に遅れた抗弁であると主張するので、この点について判断する。本件記録によると、控訴人ら訴訟代理人は、当審第三回口頭弁論期日におい右抗弁を提出したものであるところ、原審第七回口頭弁論期日(昭和三五年六月一四日)において被告ら(控訴人ら)訴訟代理人青木平三郎は、昭和三五年四月一六日付被告ら準備書面を陳述し、同書面第三項に、「仮に本件土地の使用貸借に基く土地使用権が認められないとしても、被告らは不毛の沼沢地であつた本件土地を埋立て時価坪四万円以上の価値を生ぜしめた、即ち平均七尺の埋立をし、現在二尺位は沈下しているので現実に付五尺の埋立が存在する、坪一、五〇〇円以上の埋立費用をかけて現在の価値が生じたのであるから、被告半は原告ら(被控訴人ら)に対し不当利得の法理に従い、埋立費用の実費返還を求める」旨の記載があるが、これは単に事情として述べるものであつて抗弁としては主張しないと陳述しており、原審は一七回に亘り口頭弁論期日を開いた末昭和三六年七月二四日弁論を終結していることが認められる。従つて、控訴人らは原審において、控訴人ら主張の本件土地埋立契約が認められないと仮定した場合における、控訴人半高明が本件土地埋立のために支出した費用の償還請求権もしくは右埋立に基く利得返還請求権を以てする相殺の抗弁を提出する機会を充分に持ちながらこれを提出しなかつたものであり、当審に至つて始めて提出したのは控訴人らの故意、少なくとも重大な過失によつて時機に遅れたものと認められ、又右抗弁は控訴人らの従前の主張とは異る全く新たな抗弁であつて、被控訴人らはこれを否認しており、これについて証拠調をするとすれば本件訴訟の完結を遅延せしめる結果を招来するものと認められる。よつて、当裁判所は民事訴訟法第一三九条第一項を適用して右抗弁を却下する。

(菊池 花渕 山田)

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