東京高等裁判所 昭和36年(ネ)2426号 判決
控訴人の時効の主張について考察する。本件における被控訴人と控訴人との間の自転車及びその部品の売買は前記のとおり長年にわたる継続的取引であるところ、当審証人粳田儀夫、長谷川敬之の各証言並びに弁論の全趣旨を総合すると、被控訴人は取引の際請求書を送付しそれにはこれまでの取引残高を記載していたのであるが、控訴人においてはその額について何らの異議を述べることもなく、昭和三二年二月頃まで一部弁済を続けていたことが認められる。このように、継続的取引において、債務者が自己の債務の総額を知りながら何らの異議を述べることもなく一部弁済をするときは、その債務の全額につき承認していたとみるのが相当である。それゆえ、本件取引に基づく被控訴人の債権についての時効期間の進行は、昭和三二年二月頃最後の中断があつたことになるのであり、その後被控訴人が本訴を提起し、その訴状が同年一〇月二六日控訴人のもとに送達されていることは記録上明らかであるから、右債権は時効により消滅するに由ないのである。
(脇屋 渡辺一雄 太田)