東京高等裁判所 昭和36年(ネ)2863号 判決
次に控訴人は、「本件代物弁済の予約の完結は、本件建物につき控訴人の申請に基く処分禁止の仮処分の登記がなされた後に実現したものであるから、被控訴人の右予約の完結はこれをもつて仮処分債権者たる控訴人に対抗し得ないものである」旨主張する。しかし、被控訴人が控訴人主張の処分禁止の仮処分の登記の前にすでに仮登記を経由しており、その後これに基き本登記手続をしたものであることは、さきに認定したとおりである。しかして仮登記はいわゆる順位保全の効力を有するのであり(不動産登記法第七条第二項参照)、仮登記に基き後日本登記がなされた場合は、その本登記は当然、さきになされた仮登記の順位を保有するのであつて、このことは、請求権保全のための仮登記についても、その理を異にするものではない。これを本件についていえば、本件建物につき被控訴人のためなされた前記所有権移転の本登記はさきになされた仮登記の順位を保有するものである関係上、その順位において、控訴人主張の処分禁止の仮処分の登記に優先するものというべき筋合であり、したがつて被控訴人は右所有権の取得を控訴人に対抗し得るものであると共に、控訴人は右処分禁止の仮処分を被控訴人に対抗し得ないものというべきである。(大審院昭和五年二月二二日言渡、民集九巻二一二頁所載の決定の趣旨参照)。控訴人の前記主張は、右と見解を異にするものであつて採用し難い。
(牛山 田中 土井)