東京高等裁判所 昭和36年(行ナ)128号 判決
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〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無について)
二 原告は、本件審決は、原告主張の点において判断を誤つたものである旨主張するが、これを認めるに足る資料はなく、原告が、本訴において、本件審決取消の事由として主張するところは、理由がないものといわざるをえない。すなわち、いずれも当事者間に争いのない
(1) 中央に一個、その周囲に九個、さらにその周囲に九個の素線を配置してなるストランド鋼索が本願考案出願前周知であつた事実と
(2) 前記引用公報に本件審決認定のとおりの各記載のある事実
とを総合し、さらに、これに
(3) ストランド(撚線)の材質は、のちに説示するとおり、ストランドの用途に応じ、各当業者の適宜選択しうる範囲を出るものでない事実
を参酌し、これと当事者間に争いのない本願考案の要旨とを対比考量すると、本願考案は、叙上(1)、(2)の各事実から、当業者の容易に考えられる程度のものであると認めるを相当とし、原告の挙示援用する全立証によるも、右認定を左右するに足りない。
原告は、この点に関し、まず、前記引用公報記載のものは、本願考案のように、全長を通して面接触するものでなくまた、内外二層間の境界の形状を異にする旨主張するが、前記引用公報第二図イに、本件審決認定のとおり面接触ストランドが記載されている以上、この断面図から、当業者が、他の前掲の事実と相まち、容易に本願考案をすることができるものと認定するに十分であるから、原告の右主張は、いささかも、本件審決の認定を誤りとする根拠たりえないものである(とくに、本件審決は、右第二図イを認定の資料としたものであり、この断面図がある特定部分のものであるかどうかを問題にしたものでないから、それが全長を通して同一断面形であるかどうか、内外二層図の境界が、この断面図に示されたもの以上に、どうなつているかなどということは本件審決の判断に何らの消長を及ぼしうべきものでないことは、多言を要しないところである)。
また、原告は、前記引用公報記載の圧縮導体は、本願のストランド鋼索とは、その製造技術、設備、業界を異にする別異の物品であるから、ストランドの材質は、当業者の適宜選択しうるものであるとすることはできない旨主張するが、前記圧縮導体と本願の鋼索とでは、その用途、したがつて、その材質及びこれを取り扱う業界を異にするとはいえ、共にストランド(撚線)としての型について共通性を有し、用途も必ずしも無縁とは限らないことは、それぞれの性質に徴し明らかなところであるから、それぞれの当業者が一方から他方を推考するに当たり、その材料とすべき物の選択にさしたる困難があるものとは認めがたいから、原告の右主張も理由がないものといわざるをえない。
さらに、原告は、本願考案の出願前何人もこのようなストランド鋼索を製作販売したことはないから、本願考案をもつて、本件審決認定の各事実から容易に推考できるとすることは誤りである旨主張するが、本願考案の登録出願前、前認定の各事実が存在した以上、仮に本願考案のような構造のストランド鋼索を製作販売した者がなかつたとしても、そのことから直ちに、本件審決の判断を誤りすることはできない。けだし、現実にこれを製作販売した者がなかつたとしても、本願考案自体が、その客観的な技術内容において、前掲各事実から当業者の容易に推考しうる程度の考案にすぎないことに変りはないからである。
(むすび)
三 以上のとおりであるから、その主張のような違法のあることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は理由がないものというほかはない。よつて、これを棄却する。(三宅正雄 石沢健 滝川叡一)