大判例

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東京高等裁判所 昭和36年(行ナ)72号 判決

一、原告主張の請求原因一及び二の事実は当事者間に争がない。

二、右事実によれば、昭和三十一年十月八日に請求された本件実用新案登録無効審判請求事件は、旧実用新案法第二十二条第一項の審判にあたり、現行実用新案法が施行された昭和三十五年四月一日当時特許庁に係属していたものであるから実用新案法施行法第二十一条第二項本文の規定により、なお従前の例によるものであるところ、同項但書の規定によれば、同事件についてなされた審決は抗告審判の審決とみなされ、これに対する訴は、旧実用新案法第二十六条により実用新案について準用される旧特許法第百二十八条の二の規定により、東京高等裁判所の専属管轄に属し、特許庁に抗告審判を請求すべきものでないこととなつている。

三、とつて先ず、「新法の施行の際現に係属している旧法(中略)第二十二条第一項の審判(中略)については、その審判の審決を抗告審判の審決と(中略)みなす」としている実用新案法施行法第二十一条第二項但書の規定が、原告が請求原因三の(三)において主張するように憲法に違反するものであるかどうかの点から判断する。

新実用新案法が旧実用新案法と異なる点の一つに、特許庁における審判制度について、旧法は審判及び抗告審判のいわゆる二審級制度を採つていたのに対し、(旧実用新案法第二十五条、第二十六条、旧特許法第百十条から第百十四条、第百十八条から第百二十条参照)新法が抗告審判の制度を採らず、いわゆる一審級制度を採用したことがある。もとより審級を重ねることはそれだけ手続を丁重にし審決を適正なさしめるに役立つものであることは疑いないが、一方それだけ審判において争われている権利関係の確定を延引せしめ、手続の迅速の要請からは遠ざかる。手続の迅速と審決の適正とは、いずれもその一方のために他方をないがしろにすることのできない重大な要請ではあるが、この両者を満足せしめつつしかもいかなる範囲において調和せしめるかは、立法政策上の問題であり、新法はあらゆる事情の考慮の上に、新法施行後請求される審判事件については、いわゆる一審級制度を選択し採用した。新法施行の際現に係属していた無効の審判については、実用新案法施行法第二十一条第二項本文は、なお従前の例による旨を規定したが、同審判においてなされた審決に対して更に抗告審判を認めるかどうかについて、同法は新法施行後に請求された審判事件におけると同様、一審級制をとり、これに不服な者は直ちに東京高等裁判所に訴を提起せしめることを立法政策上是なりとして、同項但書の規定をなした。この場合なるほど当該審判事件の当事者のうちには、その審決に対して特許庁において更に再審理を受けることについての期待を有していた者のあることはこれを疑わないが、その期待をもつて直ちに既得権ということができるかどうか問題であるばかりでなく、日本国憲法によつて保障される、裁判を受ける権利の剥奪と異なり、元来が立法政策上の考慮に属する、審決に対し更に抗告審判を請求せしめるか、直ちに東京高等裁判所に訴を提起せしめるかを選択規定した前記法条をもつて憲法に違反するものとは解されない。

四、原告はこれに先立ち請求原因三の(一)、(二)において特許庁が原告のなした「抗告審判の請求」を審判官の構成する審判において審理判断したことを非難する。しかしながら実用新案法施行法第二十一条第二項本文は、「新法施行の際現に係属している(中略)抗告審判については、なお従前の例による。」と規定したが、新法施行後は、この場合を措いては、抗告審判なるものは存続しないこととなつたから、(従来の「一、審判部に審判官および抗告審判官を置く。三、抗告審判官は、特許、実用新案、意匠および商標に関し抗告審判を行う。」との通商産業省設置法施行規則第五十条の規定は、昭和三十五年通商産業省令第三十七号により「一、審判部に審判官を置く」と変更せられ、三は削除された。)昭和三十六年四月十一日原告によつて提出されたこの種請求について、特許庁はこれを受理し審判官をもつて構成する審判手続において審理判断するの外ないものと解するを相当とするから原告の右の非難も当らない。

五、すでに実用新案法施行法第二十一条第二項但書の規定が合憲有効なる以上、原告の請求した「抗告審判の請求」は却下するの外なく、これを却下した審決には原告主張のような違法はないから、これが取消を求める原告の本訴請求はその理由がない。

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