大判例

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東京高等裁判所 昭和37年(う)1960号 判決

被告人 加藤弥三郎

〔抄 録〕

所論は、右薬事法において「医薬品」の無登録販売を禁止しているのは、当該物質が人の健康に害を及ぼす虞れがある場合の販売に限る趣旨であつて、本件物質による療法は有益無害であるから、右薬事法の規定によつてこれが無登録販売を禁止することはできない筈であり、若し右薬事法の規定(第二十九条第一項)が右の如き場合をも罰する趣旨を包含しているとするならば、該規定は憲法に違反し無効である、原判決のこの点に関する判断には、右薬事法第二十九条の解釈を誤つた違法か理由不備があるというのである。

しかしながら、右薬事法第二十九条第一項において、医薬品販売を登録制にしたのは、その医薬品の有効、無効又は有害、無害について、或いは販売業者の能力、資格又は適、不適等について、各私的判断に委することを禁じ、販売業を営むことを登録制として厚生大臣又は都道府県知事の監督を加えるべきものとするのが公共の福祉に合するものとしたが為であると認めるべきであつて、仮に被告人の主張する本件療法について被告人がそれを無害、有益であると信じているとしても、それを被告人個人の恣意的判断にまかすことを許さず、これを法の定める公的判断に服させるというのが法の趣旨であるというべきでかく解することが毫も憲法に違反しないことは検察官所論のとおりであり、医師法第十七条の規定において、当該の者が医師としての実力を具えていると否とを問わず適法な医師の資格を有しない者に医業を禁止していること及び道路交通法第六十四条の規定において当該の者の運転技術の巧拙を問わず運転免許のない者に自動車運転を禁止していることが各公共の福祉に合致するものであると解され毫も怪しまれず、固より違憲と解すべき事由の存在しないことにおいて、類似の例証を観取し得るものといわなければならない。原判決が本件所為につき右法律第二十九条第一項違反としたことについては、憲法違反はもちろん、その他法律解釈の誤りもまた理由不備の違法も存在しない筋合であるというべきである。論旨は理由がない。

(三宅 山下 井波)

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