大判例

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東京高等裁判所 昭和37年(う)404号 判決

判決理由

およそ、自動車運転の業務に従事する者は、自動車を操縦して路上を進行する場合、その業務の性質に照し危害の発生を避けるために必要にして可能ないっさいの注意をなすべきものであって、情況に応じ事故の発生を防止するための臨機適切な措置をとるべきはもちろん、事故の原因となるおそれのあるような措置に出でないように常時配慮すべき作為の義務を負うのである。しかして、自動車運転経験の全くない者が路上において自動車を運転することは、いうまでもなく事故を惹き起す危険がきわめて大であるから、自動車運転者がその運転する自動車に運転経験の全くない者を同上させて路上を進行している場合には、かりそめにもその者をして自己と交替して運転させるようなことは、いかなる事情によるにせよ、これを厳に慎むべき注意義務があるものをいわなければならない。原判決の認定する第三の事実及びその引用証拠によると、中古自動車のセールスマンとして事実上自動車運転の業務に従事していた被告人が、原判示日時頃原判示普通乗用自動車の助手席に片岡美佐子(当二十二年)を同乗させて東京都港区新坂町の街路を運転進行中、同女が自動車運転経験の全くない者であることを知りながら、同女に運転方法を教える考から、同女をして被告人と交替して右乗用車を運転させたところ、同女において運転操作を誤り本件の傷害事故を惹き起したものであって、右事故は直接的には同女の運転操作の誤に基因するが、運転経験の全くない同女に運転させたという被告人の注意義務の違反がなかったならば、もとより同女の運転操作の誤による事故の発生という事態を招来せずにすんだはずであるから、被告人の右注意義務の違反と右事故との間に法律上の因果関係が存在し、したがって被告人は業務上過失致傷の罪責を免れることができないものといわなければならない。原判決の注意義務の内容及び過失の態様として判示するところは、いささか簡略に失しその意を尽さにうらみがないではないが、その引用証拠と対照してその趣旨を敷衍すれば、ひっきょう叙上の説明と同旨に帰するものと認められるのであって、原判決に所論のような審理不尽、理由不備の違法はないものというべきである。論旨は理由がない。

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