東京高等裁判所 昭和37年(う)976号 判決
被告人 内川栄三郎
〔抄 録〕
職権をもつて案ずるに、原判決挙示の各証拠を総合すると、被告人は、金銭に窮した結果、電気機具商を欺罔し、買受名義あるいは買受取次名義の下に電気機具類を騙取し、これを買受価格を下廻る低廉な価格をもつて他に売却又は入質して金員を入手せんことを企て、被告人単独あるいは堀江重男その他と共謀の上、前後十六回にわたり原判決判示菅原梅代に対し右意図を秘し、それぞれ判示のように申し向けて同女を欺罔し、よつて判示各日時場所において判示各電気機具の引渡を受けてこれを騙取した事実を認めることができるのであるから、被告人の各所為は刑法第二百四十六条第一項(共謀の分については同法第六十条をも適用)に、それぞれ該当する多数の詐欺罪と認むべきであり、従つて以上の各罪は同法第四十五条前段の併合罪であるから、同法第四十七条本文、第十条に則り右各所為中犯情が最も重いと認められる罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内において量刑処断すべきにかかわらず、原判決は以上各所為を包括して詐欺の一罪と認定し、同法第二百四十六条第一項、第六十条のみを適用し、前記併合罪に関する規定を適用しなかつたことは、事実を誤認した結果法令の適用を誤つたものというべきである。そして、右の違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、所論に対する判断をなすまでもなく、原判決中被告人に関する部分は破棄を免れない。よつて、刑事訴訟法第三百九十七条第一項に則り、原判決中被告人に関する部分を破棄し、同法第四百条但書に従い、次のとおり自判する。
(罪となるべき事実)
被告人は、金銭に窮した結果、電気機具商を欺罔し、買受名義あるいは買受取次名義の下に電気機具類を騙取した上、これを買受価格を下廻る低廉な価格をもつて他に売却又は入質して金員を入手せんことを企て、
第一、原審相被告人堀江重男と共謀の上、昭和三十六年十月二十四日頃、東京都台東区浅草象潟三丁目十九番地有隣電気株式会社において、同会社社長菅原幸治妻梅代に対し、前記の目的を秘し、かつ、月賦金完済の意思も能力もないのにあるように装い、堀江においてテレビを月賦で買い受けたく、掛金は間違なく支払うなどと虚構の事実を申し向け、同人をしてその旨誤信せしめ、よつて、同日同会社の店員をして同都荒川区南千住五丁目五十四番地扇屋旅館内の右堀江に宛て価格金六万円相当のテレビ一台を配達させてこれを騙取し、
第二、単独又は杉村格らと共謀の上同年十月二十三日頃から同年十二月六日頃までの間前後十五回にわたり、前記会社において右菅原梅代に対し前記の目的を秘し、かつ、月賦金完済の意思も能力もないのにあるように装い、自己又は小林光夫らにおいてテレビ等を日賦又は月賦で買い受けたく、掛金は買主から集金してやる等虚構の事実を申し向け、同女をしてその旨誤信せしめ、よつて、別紙一覧表記載のように同会社をして同都台東区浅草田中町二丁目二番地正の家旅館こと飯塚重美方ほか十二ケ所においてゼネラルテレビ一台ほか十七点の電気機具類(価格合計金百万五千七百円相当)の交付を受けていずれもこれを騙取したものである。
(岩田 高野 栗田)