大判例

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東京高等裁判所 昭和37年(ツ)80号 判決

所論は、訴外遠藤久造から上告人に対する本件係争土地の賃借権の譲渡に対し被上告人が昭和二十七年十月十五日になした承諾について、被上告人はこれを上告人の強迫によるものとして取消す旨の主張をしていないのに、原審は右事実を認定しこれに基いて判決した違法があるというのである。

よつて按ずるに、記録によれば上告人は係争土地の占有権原として第一審において、昭和二十七年十月十五日被上告人から右土地を賃借したとの事実を主張し、原審においては右主張を維持すると共に、仮りに右事実が認められないとしても右同日訴外遠藤久造の右土地に対する賃借権を被上告人の承諾のもとに譲受けた旨の主張を追加したことが明らかである。

しかして上告人が第一審において陳述した昭和三十三年八月一日及び同年九月十二日付各準備書面には、それぞれ前記賃貸借契約に関する具体的な事実関係として「本件係争土地の部分を訴外遠藤久造から上告人に返還することが上告人、被上告人並びに遠藤の三者間で確認された(乙第二号証)」との趣旨(記録第六一丁裏)及び「被上告人も遠藤久造も自分達の非を認め、損害賠償の意味も含めて乙第二号証の契約書を作成し別紙図面(d)(ニ)(イ)を結ぶ範囲の土地(本件係争部分)を上告人が遠藤に代つて被上告人から賃借することとなつたのである」との趣旨(記録第七四丁表)の記載があり、上告人は右の事実関係に基き第一審においては被上告人と訴外遠藤との間の賃貸借と別に上告人と被上告人との間に賃貸借が成立したとの主張を構成し、第二審においては右主張の外、同一の事実関係に基いて更に上告人について訴外遠藤の有した賃借権を譲受けこれについて被上告人の承諾を得た旨の主張を追加したことが窺い知られる。右によれば前記両主張の差異は乙第二号証を作成して上告人に交付した際における被上告人の意思表示を賃貸の承諾とみるか、賃借権の譲渡の承諾とみるかの点にある(いずれにしても上告人との間に賃貸借関係の生ずることを承諾する趣旨においては差異がない)に過ぎない。(賃貸の承諾については強迫となり賃借権の譲渡については強迫とならないといつた区別の考えられる事案ではない。)

以上の関係を考慮すれば被上告人が第一審以来前者につき強迫による取消を主張している以上、特段の事情の認められない本件において第二審で新たに追加された賃借権譲渡の承諾についてもこれを主張する趣旨であると解するのが相当であり、原審がこれと同趣旨において右の主張があると認めてこれを判断したのは正当であつて所論の違法があるとは認められない。

(梶村 室伏 安岡)

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