大判例

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東京高等裁判所 昭和37年(ネ)1887号 判決

一、控訴人らは、被控訴人新井が本件(一)の建物を控訴人らに無断で被控訴会社に転貸したと主張し、被控訴会社が被控訴人新井とともに右建物を占有使用していることは当事者間に争いがないけれども、成立に争いのない乙第五号証前記被控訴人新井本人尋問の結果により真正に成立したと認める同第六号証の一ないし五、原審証人星野滝蔵、同二村清一の各証言に右被控訴人本人尋問の結果をあわせ考えると、被控訴人新井は昭和九年以来本件建物で豆腐屋を営んできたものであるところ、昭和二十九年八月右営業を会社組織に改めるべく被控訴会社を設立し、じらい右建物で引続き同一営業を継続していること、右会社の設立は同被控訴人が納税上有利な取扱を受けたいからというだけの理由から行われたものであつて、被控訴会社は代表者たる被控訴人新井ほか二名の社員からなるものであるが、被控訴人新井以外の社員は単に社員としての名称を使用することを許諾したのみであり、実際に出資をしたのは同被控訴人だけで、他の社員の出資は単なる名目上のものにすぎず、経営の実体も建物使用の状況も会社設立の前後に別段変化のあつた跡はなく、同被控訴人の個人営業と何らかわるところがないこと、以上の事実がそれぞれ認められるから、かような事実関係のもとでは、被控訴会社に対し右建物の転貸があつたといい得ても、これをもつて右賃貸借解除の原因たり得る賃借人の背信行為とは到底いうことはできず、控訴人らの右主張もまた理由がないとしなければならない。

二、控訴人らは、被控訴人新井が昭和三十四年八月本件(一)の建物につき無断で工事を始め、控訴人らの抗議にもかかわらず、家屋の基礎部分まで改造した旨主張し、原審証人吉岡美一の証言及び原審における検証の結果によれば、被控訴人新井は控訴人ら主張の頃本件(一)の建物の表入口の側にシヨウ・ウインドウとカウンターを設け、建物前面の屋根の庇を取換えたほか、勝手場の部分を一坪弱拡張し、腐蝕した土台をコンクリートの土台に修理し、なお店舖の内部に若干の改装を加えたことが認められるけれども、右改造工事自体について控訴人らが抗議したことは、前記松本イネの供述によつてもこれを認めるに十分ではなく、かえつて右検証の結果に徴すれば、上記程度の改造は、右建物全体の構造からみて建物の部分的朽廃を防止しかつ店舖内外の外観を整備することを主たる目的として行われた小規模の改造にすぎず、しかも成立に争いのない乙第三号証及び前記被控訴人本人尋問の結果によれば、右の改造工事は被控訴人新井が所轄保健所長から右建物店舖の改造をしなければ食品衛生法規により営業継続の許可を与えることはできない旨警告を受けたため、やむを得ずこれに着手した次第であることが認められるから、このような事情に同被控訴人が右賃借建物の店舖を昭和九年以来豆腐屋営業のために使用してきた事実をあわせ考えると、上記程度の改造は、それがかりに賃貸人の承諾なくして行われたものとしても、これをもつて賃貸借解除の原因たるべき賃借人の不信行為であるとは到底なしがたいものといわなければならない。

(小沢 池田 中田)

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