東京高等裁判所 昭和37年(ネ)2127号 判決
本件建物は、もと控訴人清積久雄の所有であつたが、同控訴人は、昭和二十九年四月、控訴人清積産業株式会社(以下控訴人清積産業という。)の訴外株式会社平和相互銀行に対する債務を担保するため、本件建物に根抵当権を設定し、同銀行は、昭和三十年五月、右根抵当権の実行として、東京地方裁判所に対し、本件建物の競売を申し立て(同庁昭和三〇年(ケ)第八九二号不動産競売申立事件)、同裁判所は、同年六月三日競売開始決定をなし、昭和三十二年六月二十一日競売期日を開いた(以上の事実は、被控訴人と控訴人清積久雄との間では、当事者間に争がない。)被控訴人の親権者藤原利昭は、右競売期日において、被控訴人のためにする意思で被控訴人名義で競買の申出をした。もつとも、その際自己が被控訴人の親権者として申出をする旨は表示せず、また親権者であるとの資格証明書をも提出しなかつた。執行吏は、右申出に基づき、被控訴人を最高価競買人と定めた。同裁判所は、昭和三十二年七月九日被控訴人に対し競落許可決定をなし、その後右決定は確定し、右利昭は、昭和三十三年一月十日、被控訴人名義で、競落代金を納入した。
他に右認定を左右するに足りる証拠はない。
右認定事実によると、被控訴人の親権者である藤原利昭は被控訴人を代理して競買の申出及び競落代金の納入をしたものと認めるのが相当であり、従つて被控訴人は、右競落代金の納入により本件建物の所有権を取得したものと認められる。もつとも、右競買の申出には、被控訴人が他の親権者である藤原富貴代によつて代理されていない瑕疵があるけれども、証明部分について成立について争なくその余の部分も弁論の全趣旨によりその成立の認められる甲第一三号証によると、藤原富貴代は、昭和三十八年一月十四日、競売裁判所である東京地方裁判所に対し、被控訴人の親権者である藤原利昭が被控訴人名義で競買した行為を追認する旨の書面による意思表示をしたことが認められるから、これによつて右瑕疵は治癒されたものといわなければならない。また、右利昭のなした競買の申出には、被控訴人の親権者としてするものであることが表示されておらず資格証明書の提出もされていないが、競落許可決定が確定した後においては、競買の申出はこのような瑕疵のあることを理由として競落許可決定の効力を争うことはできないと解するのが相当である。
(村松 杉山 山本一)