東京高等裁判所 昭和37年(ネ)2181号 判決
控訴人は、被控訴人石沢に被控訴人柴野の代理権がなかつたとしても、表見代理の規定により結局本件公正証書は有効となるものと解すべきであると主張するけれども、被控訴人石沢が被控人柴野を代理する権限を有しない以上、同被控訴人が被控訴人柴野を代理して訴外近藤ちちぶに公正証書の作成手続を委任しても、同訴外人が被控訴人柴野の代理権を取得するいわれがなく、而して「公正証書により直ちに強制執行を受けても異議がない旨の合意」、所謂強制執行受諾約款は訴訟法上の法律行為であり、また公証人に対し公正証書の作成を嘱託することも公法上の行為であつて、これらの行為については民法第一一〇条の表見代理の規定はその適用がないと解すべきであるから、控訴人のみぎ主張は、爾余の点について判断するまでもなく失当と謂うべきである。
(岸上 室伏 安岡)