大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和37年(ネ)2233号 判決

控訴人主張の如く土地及びその地上の建物が同一所有者に属するときその建物のみが任意譲渡された場合には特段の事情がないかぎり右敷地の使用権を設定する合意があつたものと解するのが相当であろうが、その敷地使用権はたかだか使用借権であつてこれを一歩進めて当事者間に暗黙のうちに常に地上権又は賃借権が設定されたものと解すべきではない。このことは本件の場合におけるが如く建物に抵当権が設定されかつ代物弁済の予約による完結権行使によつてその所有権が移転された場合にあつても同様である。このような任意譲渡の場合にも法定地上権に関する民法第三百八十八条を類推しようとする控訴人等の主張は採用し難い。思うに法定地上権の制度は土地又は建物の一方が抵当に入れられその結果競売によつて所有者を異にする際に建物のための土地の潜在的利用関係を現実化することが事実上不能に近いのでこれを法律上当然に実現せしめようとするものであるに反し、本件におけるが如く当事者の意思によつて建物が譲渡せられたときは当事者が賃借権又は地上権を設定することができる余地があるからである。(昭和四一年一月二〇日最高裁判所判決、最高裁民集二〇巻一号二二頁参照)

而して訴外坂本と訴外石山との間に本件建物につき代物弁済の予約をするに際し明示又は黙示にその敷地についての地上権ないし賃借権設定の本契約(条件つきで)又は予約があつたものと認められないことはさきに認定したとおりであるから控訴人等主張の如く控訴人寺町が本件建物の敷地に地上権又は賃借権を取得する余地はないと謂わねばならぬ。

(毛利野 加藤 安国)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!