大判例

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東京高等裁判所 昭和37年(ネ)553号 判決

控訴人は、当審にいたり、被控訴人が他に土地建物を取得したこと及び当審における和解勧告の際の被控訴人の要求事項などいずれも本訴提起後の事情を挙げ、これを正当事由に該当するものと主張する。控訴人が本訴提起の当初から一貫して解約申入の主張を維持している訴訟の経過に鑑みるとき、控訴人は、本訴提起後も解約申入を継続して行つて来たとみるべきであるので、この点について判断する。被控訴人の長男北沢要が昭和四一年四月一日本件建物から東京都世田谷区祖師ケ谷一丁目三六五番地の四三家屋番号同町三六五番四三の一木造亜鉛メツキ鋼板瓦交葺二階建店舗兼居宅一棟建坪四八・六七平方メートル二階坪二五・六一平方メートルに移つたこと右建物及びその敷地一一二・〇九平方メートルが同人の所有名義になつていることは、当事者間に争がなく、控訴人は、右土地建物が実質は被控訴人の所有であり、被控訴人は、いずれは右建物に移転する意図を有するものと主張するが、この点に関し当審において控訴人本人の供述するところは想像の域を出ず、当審における被控訴人本人訊問の結果(第二回)によれば右土地、建物は被控訴人の長男が被控訴人とは独立の営業を営むために買求めたもので、被控訴人も現在右建物に引き移る意図のないことが認められる。当審における和解勧告の際、被控訴人が、本件建物明渡の条件として、本件建物におけると同程度の営業が成り立つ建物と、営業の補償をも含め相当額の立退料を求める旨の提案をしたことは、事実であるが、被控訴人は、前記のとおり長男北沢要の建物に移転するというのでなく、他に建物を求める事情にあつたのであり、しかも単なる住のみの変更ではなく、営業を伴う住の変更の場合にあつてそれが賃貸人側の事情に基づくものであるときに、和解の条件として相当額の金員を要求することは、あえて異とするに足らず、被控訴人が右の提案をしたことが賃貸借の当事者の信頼関係を破壊するとする控訴人の主張は、失当というほかはない。そして、当審における控訴人本人訊問の結果(第二回)によつて認められる、控訴人の長男素彦は昭和三九年一二月一六日以後に結婚し、控訴人と別居して独立世帯を構えている事実を参酌すれば控訴人の解約申入は、当初においてもまたその後においても正当事由に基づくものとは認められず、無効であるので、右解約申入により賃貸借契約が終了したとする控訴人の主張は、理由がない。

(仁分 小山 右田)

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