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東京高等裁判所 昭和37年(ネ)773号 判決 1967年2月27日

控訴人(附帯被控訴人)

富士建築木工株式会社

控訴人

織田四郎

右両名代理人

武岡嘉一

控訴人

磯崎勝美

井上千枝子

右両名代理人

河和金作

外五名

控訴人

館野セツ

被控訴人(附帯控訴人)

台道重郎

右訴訟代理人

小町愈一

外三名

主文

原判決を次のとおり変更する。

控訴人(附帯被控訴人)富士建築木工株式会社は被控訴人(附帯控訴人)に対し別紙物件目録(一)第一記載の土地のうち同目録(二)記載の部分を引き渡し、かつ金一、三九七円及び昭和三二年三月一五日から右土地部分の引渡ずみに至るまで一カ月につき金二三一円八八銭の割合による金員を支払うべし。

被控訴人(附帯控訴人)の控訴人(附帯被控訴人)富士建築木工株式会社に対するその余の請求、控訴人織田四郎、同磯崎勝美、同井上千枝子、同館野セツに対する請求はいずれもこれを棄却する。

訴訟費用は、第一、二審を通じ被控訴人(附控訴人)と控訴人(附帯被控訴人)富士建築木工株式会社との間においてはこれを五分してその一を控訴人富士建築木工株式会社の負担、その余を被控訴人の負担とし、被控訴人とその余の控訴人らとの間においては被控訴人の負担とする。

この判決は、第二項に限り仮に執行することができる。

事   実≪省略≫

理由

一別紙物件目録(一)第一記載の土地すなわち本件土地が被控訴人の所有であり、控訴会社が昭和一九年四月一日被控訴人からこれを期間二〇年、賃料一カ月金三四二円九〇銭、毎月二八日限り持参支払うこと、賃の支払を二回以上怠つたときは催告を要せず賃貸借契約の解除ができるという約定で賃借し、以後右賃料は改訂されて昭和三〇年一月分以後は一カ月につき金一、三九七円となつたこと、控訴会社は右賃借地上に別紙物件目録(一)第二の(一)、(二)の各建物、同目録第三、第四の建物を所有して右土地を占有し、控訴人磯崎は同目録第二の(一)の建物、控訴人織田は同第二の(二)の建物、控訴人井上は同第三の建物、控訴人館野は同第四の建物にそれぞれ居住して、各自右各建物の敷地を占有していることは当事者間に争いがない。

二(控訴会社の賃料延滞による契約解除について)

被控訴人は、控訴会社は昭和三〇年一月一日から同年一二月末日までの前記割合による約定賃料の支払を延滞し、被控訴人の再三の催告にもかかわらずその支払をしないので昭和三一年一月一〇日本件土地の賃貸借契約解除の意思表示をし、これにより同契約は解除されたと主張するので判断する。

(一)  被控訴人の右解除の主張はまず賃料の支払遅滞のときは催告なく解除し得るとの特約にもとづくものであることは弁論の全趣旨から明らかであるところ、本件賃料は前記のように毎月二八日持参支払うこととの約定であつたわけであるが、その後昭和二一年六月分から昭和二九年一二月分までの賃料支払の状況は別紙(四)賃料支払表記載のとおりであつたことは当事者間に争いのないところであつて、この事実に徴すれば、控訴会社は右昭和二一年六月分からは賃料を数カ月分ごとに一括して支払い、殊に昭和二四年一月分以後はほぼ六カ月ないし一カ年分を一括して支払をし、被控訴人においてはこれを受領して来たことが認められるのであり、現に本件契約解除の意思表示は、まさに控訴会社の昭和三〇年度一カ年分の賃料延滞を解除の事由としていることが明らかであつて、これらの事実と当審における被控訴本人尋問の結果により被控訴人の自署したものと認める甲第三号証中の昭和二四年度らん外にある「二四年度ヨリ半分年六百円約束織田氏契約ト約シタ。」という記載に原審における被控訴本人尋問の結果(第二回)をあわせ考えれば、六百円の数額が六カ月分の賃料額をあらわすものであるかどうかはさておき少くとも昭和二四年度分以後の賃料につき被控訴人は前記争いのない賃料の支払時期を変更して六カ月分を一括してその支払分の最後の月末までに支払うことに承諾を与えたものと認定するのが相当である。原審(第一、二回)並びに当審における被控訴本人尋問の結果中この認定に反する趣旨の供述は上掲各証拠資料に照らして信用することができない。

(二)  そうして、本件賃貸借契約条項として賃料の支払を二回以上怠つたときは催告を要せず契約の解除ができる旨定められていたことは前記のとおりであるが、成立に争いのない甲第一号証(本件賃貸借契約書)の第五条の記載に徴すれば、右二回というのは賃料の毎月支払いを前提として二カ月分以上遅滞があつたときという趣旨に解すべきであることは明らかなところ、右前提たる毎月払いの約定が合意により変更されたものと認めるべきこと前記とおりである以上右条項もこれに応じておのずから変形を余儀なくされ、少くとも二回以上なる文言はその存在の基礎を失つたものと解すべきである。しかして当事者間に争いない前記賃料の支払状況に本件口頭弁論の全趣旨をあわせれば、特に昭和二四年一月分からは六月分ずつ一括支払と合意した後も控訴会社は必らずしもこれによらず六カ月分ないし一年分を一括して支払い、しかも必ずしもその支払分の最後の月の末日までにこれを完了するとは限らず常時数日から数カ月おくれて支払つたにもかかわらず、被控訴人はこれを受領し、しかも後記のように被控訴人の屋敷内の一角にある被控訴会社に対し抗議するのは一挙手の労で足りるのにその間かくべつ異議を述べた形跡はなく、いわんや当初の契約条項にもとづき催告なく契約解除の挙に出るようなことは、少くとも本訴で主張する昭和三一年一月一〇日までは一度もなかつたことがうかがわれる。このような事実によつて考えれば被控訴人は前記賃料の一括支払もその多少の遅延はこれを宥恕して直ちに解除権を行使する意思はなく、控訴会社もまた右被控訴人の態度に信頼し、その支払について多少の遅延はあつても、被控訴人から何らかその旨の念達があればかくべつ無警告で抜打ち的に解除されることはあるまいと期待し、その期待の上に事を運んで多年何事もなく経過したものというべきであり右事情にかんがみ会社がしかく期待したとしてもあながち無理ではないと認められる。してみると賃料支払を怠つたときは催告なくして契約を解除しうる旨の特約は当事者間の多年の慣行を通じその暗黙の合意により削除されたものというべきであるか、少くとも右特約によつて催告なく解除するのは信義則上許されないと解すべきである。

(三)  しからば被控訴人が本件賃貸借契約を解除するには民法第五四一条にもとづき控訴会社に対しまずもつて相当期間を定めて延滞賃料につき履行の催告をすることを要するものというほかはない。この点につき原審における被控訴本人尋問の結果(第一回)中には昭和三〇年一一日ごろ控訴会社代表者織田四郎に対し賃料の支払を催告した旨の供述があるが、右催告の時期並びにその事実の有無があいまいであるのみでなく、原審及び当審における控訴会社代表者兼控訴人本人織田四郎の供述とくらべて被控訴人本人の右供述はにわかに採用することができず、その他に本件賃貸借契約の解除前履行の催告があつたことを認めしめる的確な証拠がない。従つて、被控訴人主張の前記契約解除の意思表示は解除の前提たる延滞賃料についての履行の催告を欠くからこれが効力を生ずるによしなく、右事由にもとづく解除の主張は失当である。

三(無断転貸による契約解除について)

(一)  控訴会社が訴外田中はまよに対し昭和三一年三月三一日本件土地のうち西南隅七坪七合七勺すなわち武蔵野市吉祥寺八丁三一〇八番所在木造瓦葺居宅一棟建坪二一坪七合五勺のうち西側家屋番号同所丙第九九五番の四木造瓦葺平家建店舗兼居宅建坪七合七勺の敷地部分の賃貸権を譲渡したことは当事者間に争いがなく、被控訴人が右賃借権の無断譲渡を理由として本件訴状をもつて控訴会社に対し本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をし、右訴状が昭和三二年三月一四日控訴会社に送達されたことは記録上明らかである。

(二)  控訴人らは右賃借権の譲渡につき被控訴人から譲渡の承諾を得たと主張するので検討するに、右当事者間に争いのない事実に<各証拠>をあわせれば、控訴会社代表者織田は本件土地上の控訴会社の営業所兼控訴人織田の居宅(別紙物件目録(一)第二の(二)の建物)の裏側にあたり本件土地の西南方の部分に三戸建一棟の建物を建築してこれを他に賃貸することとし、昭和三〇年一〇月建築に着手、同年末までにこれを完成し、そのうち別紙物件目録(一)第三の建物を翌三一年二月二七日控訴人井上に、同第四の建物を同年一月二四日控訴人館野に賃貸し、残余の西側の建物一戸すなわち上掲家屋番号同所丙第九九五番の四の店舗兼居宅はその敷地の賃借権とともに同年三月三一日訴外田中はまよに売却、譲渡したこと、織田は右建築に着手の前後ころ被控訴人に対し右建築の承諾を求め、被控訴人もその承諾を与え、右建物の棟あげに際しては織田から祝酒一升を贈られたことがあつたことを認めることができる。原審(第一回)並びに当審における被控訴本人尋問の結果中同人が右建物の建築についてさえも承諾したことがないという趣旨に帰する部分は信用することができない。織田四郎本人は、原審(第一回)及び当審において、右承諾を求めた際さらに右建物の三戸中一戸は建築資金のつごうにより将来売却することがあるかも知れない旨を申し述べ、被控訴人はこの点についても承諾をした旨を供述するのであるが、この点は原審(第一回)並びに当審における被控訴人本人の供述にくらべて信用することができず、当審証人三須一郎のこの点に関する証言も結局は織田からの伝聞の域を越えず、その採用することができないことは織田供述と同断である。もつとも右証人三須一郎及び織田四郎本人の各供述中には控訴会社が田中に右物件を売却するに際し、同人との間で賃借権の名義書換科の負担について取りきめがなされたことがうかがわれる部分があるが、かかる取りきめがあつたとしても当然に地主たる被控訴人が賃借権の名義書換を承諾していたとしなければならないものではなく、承諾するか否か未定の問にかかる取りきめのなされることもあり得るから、これによつて前記承諾の事実を推測せしめるものとするには足りない。本件賃料不払による解除の意思表示の後にあえて右譲渡をしたとしても、当然に右承諾あることを認めしめるものではない。そうして、前記建物の建築の承諾が当然に田中に対する右売却建物の敷地賃借権の譲渡の承諾を含むと解すべくもないことは、後者には賃借人の変動があるのに反して前者はかような結果を生じないことに徴してみても明白な事理というのを妨げず、その他本件全証拠を通じてみても被控訴人が前記賃借権の一部譲渡を承諾したことを認めるに足りる証拠はない。従つて、田中に対する前記賃借権の一部譲渡は賃借人たる被控訴人に無断でなされたものというべきであり、右承諾を前提とする控訴人らの主張は失当である。

(三)  控訴人らは右賃権の一部譲渡を理由とする解除権の行使は権利濫用であるから許されず、右解除は全部もしくは一部について無効であると主張する。よつてさらにこの点について検討する。

(1)前記当事者間に争いない事実によれば、田中に対する譲渡建物の建坪並びにこれに伴い譲渡の対象とされたとする土地賃借権の面積は実測三六・九九平方メートル(一一・一九坪、前記七坪七合五勺とあるのは登記簿上の面積)であつて、控訴会社の総賃借面積四一九・八三平方メートル(一二七坪)に対して占める割合は一〇分の一を出ず、また右建物の床面積を含め現地につきその建物敷地として見るべき土地の範囲は別紙物件目録(二)記載のとおりで、控訴会社の賃借地の西端の地点を(イ)点とし、別紙(三)図面記載のとおりの方位、距離をもつて特定される(イ)(ロ)(ホ)(ヘ)(イ)の各点を順次連結した線内の土地六九・六八平方メートル(二一・〇八坪)であつて(これが右譲渡建物の敷地として特定し得べきことは被控訴人の認めるところである)、控訴会社賃借地全体の六分の一を越えない程度のものであることが明らかである。

(2)また弁論の全趣旨によれば、もともと控訴会社の本件賃借地は被控訴人の占有使用するその住居の屋敷(少くとも八〇〇余坪あり、区域内の林地を加えれば優に一〇〇〇余坪となる一団の土地)の北西の一隅に位するもので、控訴会社の賃借地中右譲渡建物の敷地と目すべき土地は前記図面表示のように(イ)(ロ)・(イ)(ヘ)の各線において被控訴人の居宅敷地に隣接し、被控訴人としては本件賃貸地中右(イ)(ロ)(ホ)(ヘ)(イ)の範囲の部分を取得すれば公道から自己の屋敷内を通つてこれに立ち入ることができ、右部分をそれ自体として利用することができるのはもちろん、右(イ)(ロ)・(イ)(ヘ)の線上にある境を取り払えば自己の土地と一体として使用するに事欠かず、その所有地全体の効用の増加をはかり得る関係にあり、一方控訴会社としても右範囲の部分はその賃借地の西南端の部分にあたり、これを失うとしても控訴会社所有の建物敷地たる残余の部分の使用になんら支障を生じないことが認められる。

(3)現に成立に争いない甲第四号証の記載と弁論の全趣旨によれば被控訴人と右田中はまよとの間にはその後昭和三三年一二月八日武蔵野簡易裁判所において被控訴人は田中から右建物を代金四〇万円で買い取り、田中は昭和三五年九月末日までにこれを明け渡すとの調停が成立(前認定の事実関係においては田中は当然借地法上の建物買取請求権を行使し得べかりしものと認められる)、現在すでに右建物は空家となつていることがうかがわれるから、右建物は被控訴人が自由に使用処分し得べき状態を取得しているものと解せられる。

(4)控訴会社が前記建物を建築するについては被控訴人の承諾を得たこと、内一戸を田中に譲渡するについては同人との間で被控訴人に支払うべき名義書換科について話合いのあつたことは前記のとおりであり、この事実からみれば控訴会社としては被控訴人との従来の関係から右賃借権の一部譲渡については被控訴人の承諾の得られることを期待し、そのさいは名義書換料として相当の金員を被控訴人に取得せしめることを予定していたことが推認せられ、控訴会社が当初から被控訴人の意思を全く無視して事を進める意思であつたというような場合と事情を異にする。

(5)ひるがえつて控訴人らの側の事情を一瞥するに、原審及び当審における<各証拠>に前認定の事実をあわせれば、控訴会社は本件借地上に別紙物件目録(一)第二ないし第四記載の各建物を所有し、そのうち第二の(二)の建物を自ら使用し、同所においてガソリンスタンドを営み、これによつて控訴人織田四郎の一家及び使用人ら生計をたて、その余の建物中右第二の(一)の建物は控訴人磯崎に、第三の建物は控訴人井上に、第四の建物は控訴人館野に賃貸し、これら控訴人はいずれもこれらの建物において飲食店を営み、それによつて生計を維持しており、一朝これらの建物を失えばたちまち路頭に迷う状況にあることがうかがわれる。

以上の事実によつて考えれば、控訴会社がその賃借権をたとえ一部でもこれを賃貸人たる被控訴人の承諾なく他に譲渡したことは、それ自体として責められるべきものであり、その限度においてほんらい人的な信頼関係に基礎づけられるべき賃貸借において賃貸人に対する一の背信行為を構成するものであることは否定し得ない。しかしそのことの代償として直ちに本件賃貸借全体を解除し得るものとするのは早計である。なるほど一個の契約をもつてした賃貸借にあつては賃借人は当該賃借物のいずれの部分についても無断で他に賃借権を譲渡せざるべき義務を負担しているから、その一部についてでも右義務に違背すれば特段の事情のない限り、全部について解除を免れないのを原則とする。その意味では賃貸借を継続しがたい背信性は賃借権の全部にてもあれ、一部にてもあれ、その無断譲渡に象徴されているものといい得るであろう。しかし本件においては右に認定したとおり、前記建物の敷地と目すべき土地はその全体に比してわずか六分の一にみたないきわめて僅少な面積を占める一隅であり、かつこれを賃借地の他の部分から分離してもかくべつの不都合はなく、賃貸人が右部分のみを回収するとしてもそれ相応の利益が得られるという事実関係にあり、しかも右賃借権の僅少な一部の無断譲渡を理由に賃貸借全部が解除され、その全体が返還せしめられるときは、たんに直接賃借人たる控訴会社にいちじるしい不利益を来たすのみならず、控訴会社の賃借権に依存して生活を持する他の控訴人らの地位をも根底からくつがえすこととなり、解除の原因とそのもたらす結果との均衡を不当に害するものであつて、法の理想の一たる公平の観念にもとることとなる。かような段階の事情の存する本件においては、右賃貸借の解除は、無断譲渡にかかる賃借地の一部についてだけその効力を有し、その余の部分については解除の効力は及ばないと解するのが相当である。かく解してこそはじめて、賃借人の非違に対応する不利益の強制として必要にしてかつ十分な限度を保ち、もつともよく公平にかない、また信義則の要求をみたすものといい得るのである。この意味においては前記の如き特段の事情の下における賃借権譲渡は、ひつきよう当該部分の賃貸借の継続を不可ならしめる程度において背信性を有するものと解すべきである。この結果は、債務不履行を理由とする一般の契約解除の場合における一部の債務不履行による契約の一部解除と軌を一にするものである。

はたしてしからば被控訴人の本件賃貸借契約の解除は前記譲渡建物の敷地として特定し得べき別紙物件目録(二)の土地すなわち別紙(三)図面(イ)(ロ)(ホ)(ヘ)(イ)の各点を順次連結した範囲の土地部分に限つて有効であり、その余の部分については権利行使の正当の範囲を超えるものとして解除の効力を生じないものといわなければならない。この点についての控訴人らの右解除無効の主張は右の限度で理由があるが、これを超える全体についてはその理由がなく、採用することができない。

(四)  しからば、被控訴人と控訴会社との本件賃貸借契約は前示訴状による意思表示の到達した昭和三二年三月一四日限り別紙物件目録(二)記載の土地部分について解除により終了したものというべく、残余の部分は、なお被控訴人と控訴会社との間に賃貸借関係が存続しているわけである。

被控訴人が控訴会社に対し収去を求め、その余の控訴人らに対し建物退去、敷地の明渡を求める別紙物件目録(一)第二ないし第四の各建物がいずれも控訴会社の所属に属し、(イ)、(ロ)、(ホ)、(ヘ)、(イ)の範囲を除いた残余の賃借部分に所在することは前説示により明らかなところであり、控訴人織田、磯崎、井上、館野らがそれぞれ前記一掲記の現に占有中の建物を控訴会社から賃借していることは被控訴人の明らかに争わないところであるからこれを自白したものとみなす。従つて、被控訴人の控訴会社に対する右各建物の収去、敷地の明渡を求める請求、その余の控訴人に対する建物の退去、敷地の明渡を求める請求はすべてその理由がないが、控訴会社が前示(イ)、(ロ)、(ホ)、(ヘ)、(イ)の範囲を未だ占有中であることは当事者者に争いがないから(地上建物を被控訴人が取得したことは前示のとおりであるがその敷地部分を控訴会社が返還したことはこれを認めるべきものがない)同会社は被控訴人に対してこれを引渡すべき義務がある。

四(賃料並びに損害金請求について)≪以下省略≫(浅沼 武 間中彦次 柏原允)

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