東京高等裁判所 昭和37年(ラ)548号 決定
よつて審案するに、相手方の本件強制執行停止決定申立の理由が、抗告人主張のとおりであることは記録上明らかであり、その疎明資料として提出したのは、昭和三七年七月七日及び同年八月三一日付の家屋明渡中止調書謄本及び執行吏の竹村次男に対する執行通知書並びに契約書写だけである。ところで右契約書は竹村が相手方に対し横浜市南区六ツ川町四二二番地タケムラ工芸社代表竹村次男が賃借中の同所々在工場の賃借権及び営業権を譲渡し、同時に現在の営業を両名の共同経営とするものとし、経営の方法等を定めたものであり、昭和三七年七月七日付家屋明渡中止調書謄本には、同日執行吏が明渡の執行に赴いたところ、社員横井一男が居合せて、同人は当所は去る五月中司興業株式会社(代表者相手方)となり、竹村次男は工場長として働き、個人経営ではない旨述べたとの記載がある。
しかしながら、抗告人提出の上申書写、家屋明渡中止調書謄本写(同年七月三〇日及び同年八月三一日付)、家屋明渡競売中止調書謄本写によると、抗告人は同年七月七日の執行に際し横井が前記のとおり本件家屋は中司興業が占有し、竹村は工場長として働いているなどといつたので、中司興業に赴いて問合せたところ、同社では右家屋は同社と無関係であると言明したこと、そこで抗告人は執行吏にその趣きを伝えて執行を求めたので、執行吏は同年七月三〇日本件家屋に臨み再び横井に会つて中司興業の言明を話したところ、横井も同所が竹村個人の経営であることを認めたが、執行吏は補助員がいないので当日は執行を中止したこと、さらに同年八月一〇日執行の際抗告人と竹村との間で交渉が行われ、竹村が同日までに注文を受けた商品を完成して納品するまで執行を猶予し、その間竹村は執行停止の手続をとらないことを約したこと、その後同月三一日にも抗告人と竹村との交渉があつたが、以上の期間を通じて相手方及び竹村から前記契約書を示されたことがないことが疎明される。以上の事実を合せて考察すると、相手方提出の前記資料は真実に合うものとは認め難く、他に本件執行の第三者である相手方が本件家屋を占有している事実を認むべき資料は見当らないから、結局相手方の本件強制執行停止決定申立は、その疎明がないといわざるを得ない。
(千種 渡辺一 太田)