大判例

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東京高等裁判所 昭和37年(ラ)615号 決定

本件記録によると抗告人が相手方整理会社に対して抵当権者として優先権があると主張している債権額は元金四、〇七六、〇〇〇円これに対する日歩八銭の割合による二年間の損害金二、三八〇、五三〇円以上合計六、四五六、五三〇円であること、抗告人は右債権の共同担保物件である田辺久弥個人所有名義の家屋(東京都台東区浅草三筋町二丁目三番地五、家屋番号同町三番の一七木造瓦葺二階建作業所居宅一棟建坪二二坪二階一六坪)について抵当権実行による競売の申立をなし競売手続が開始され、最低競売価額を金二、二五五、〇〇〇円とし競売期日を昭和三七年九月二四日と定められたが、抗告人は本件競売手続中止決定の対象である相手方整理会社所有の家屋と一括競売を希望したため前記田辺久弥個人所有家屋に対する競売期日は延期されたこと、相手方整理会社は抗告人に対する前記債務支払の引当として東武信用金庫浅草支店と昭和三七年九月一八日毎月の掛金三〇万円、満期日昭和三八年一二月一八日、満期給付額四、五九〇、六〇〇円なる定期積金契約を締結し、毎月金三〇万円の払込みをして昭和三八年三月一一日現在で金一八〇万円の積立をしたこと、本件競売手続中止決定の対象である建物は相手方整理会社の店舖事務所作業場倉庫等であつて、同会社の運営に欠くべからざるものでその営業の基盤であること同会社には約四〇名の従業員が営業に従事していること及び同会社には約六六名、債権総額約一六、四三六、七一四円にのぼる一般債権者があることが認められる。

抗告人は前記田辺久弥個人所有の家屋はその所在位置形状からみて到底前記最低競売価額で競落される見込がないから前記本件建物と一括競売する外はないと抗争するけれども抗告人主張の右事情を認める的確な資料はない。

又抗告人は相手方整理会社は整理の見込がないと主張するけれども本件記録によると相手方整理会社は昭和三五年五月三一日整理計画案を所轄裁判所に提出し、昭和三七年八月一日担保付債務弁済計画案を作成する外その営業状態の改善を図り会社の更生につとめ漸次業績があがりつゝあること、抗告人等少数を除く多数の債権者が相手方整理会社の整理に協力していることが認められるから整理開始決定後数年を経過しているからといつて整理の見込がないものということができない。

以上認定の諸事実を綜合して判断すると本件競売手続が強行されると相手方整理会社の整理は計画の立案実行も不可能となりその従業員は職を失い前記多数の一般債権者も弁済をうける見込が全くなくなるものというべく他方右競売が中止された場合抵当権者たる抗告人が或る程度の損害を蒙ることは推測するに難くないけれども前叙認定の諸般の事情に照らして不当の損害を及ぼすおそれがあるものとは到底謂うことができない。

従つて本件競売手続の中止は商法第三八四条にいう債権者の一般の利益に適応し且つ競売申立人に不当の損害を及ぼすおそれのないものと認めるを相当とするから原裁判所が同法に基いて競売手続の中止決定をしたことを違法ということができない。

(菊池 川添 花渕)

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