東京高等裁判所 昭和37年(ラ)759号 決定
なお、再抗告人は、「商法第二〇五条は株券の譲渡の全経過が真正なものであると推定しうる旨を規定したものではなく、また株券を盗取又は拾得したものが、裏書や譲渡証書を偽造することはきわめて容易なことであるから、原決定が本件株券について名義書換がなされたとの一事で、その株券について盗難紛失の疏明がないとしたことは、商法第二〇五条の解釈を誤つたか又は採証の法則を誤つたものである。」旨主張する。しかし、株式の名義書換は、会社に対し株券を呈示して株主たることを証明し株主名簿上の株主たることの記載の更正を求めることであるが、裏書による記名株式の譲受人は裏書の連続により(商法第二〇五条第二項)、また譲渡証書による譲受人は株券に株主として表示せられた者の署名ある譲渡証書により(同法第三項)その権利を証明するときは、いわゆる資格授与の効力が認められ、適法な所持人と推定されるのであるから、記名株式につき名義書換がなされた場合には、かくべつの事情のない限り、原決定のいつているように、一応真正な経過をもつて株式の譲渡がなされたものと推定することができるわけである。また、原決定は、本件公示催告の申立前にすでに本件株券について第三者のために名義書換がなされた旨の株券発行会社からの通知書を斟酌すれば、再抗告人提出の盗難届出証明書だけでは、まだ盗難紛失の疏明が充分でないと認めたまでのことであつて、本件記録によれば、原決定の右認定は相当である。従つて、原決定には再抗告人主張のような商法第二〇五条の解釈を誤り又は採証の法則の適用を誤つた違法はない。
(伊藤 杉山 山本一)