東京高等裁判所 昭和37年(行ナ)170号 判決
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〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無について)
二 原告は、本件審決は、原告主張の三点において判断を誤つたものであり、違法として取り消されるべきものである旨主張するが、原告の右主張は、いずれも理由がないものといわざるをえない。すなわち、本訴において、原告は、本件審決が、原告主張の三点において、本願発明は引用例のものと相違することを看過誤認した旨非難するが、これは全く理由のない非難である。けだし、本件審決が、本願発明はこれらの点において、引用例のものと相違する旨判断していることは、その審決理由の記載に徴し、まことに明白なところであり、その限りにおいて、何らの看過も誤認も存しないからである。
しかして、<書証>に本件口頭弁論の全趣旨を参酌考量すると、ガラス繊維の製造に中空回転体(本願発明においても、使用する中空回転体の特別の限定はないことは前示のとおりである。)を使用することは本願出願前周知の事実であつたこと、引用例における気体流は圧搾空気その他の適当なガス媒体が用いられ、牽引に援助を与える作用を営むものであり、したがつててそれは相当の速度を有するものと認められること、及びガラス繊維の製造において、熔融体の細糸化に高速気体を用いることが本願出願前周知であることが認められ、これらの事実と当事者間に争いのない引用例の記載内容とを総合すると、本願発明は引用例記載のものから当業者の容易に実施しうべき程度のものであると認めるのが相当であり、これを左右するに足る証拠資料は全くない。なお、原告は本願発明においてはその記載の温度を使用することにより、フイラメントの細糸化と強力な部分的焼鈍の効果を挙げうるのであり、この温度は一般に摂氏一〇〇度から四〇〇度の間の温度を意味するものである旨主張するが、「繊維に伸張するために与える必要がある温度より低い比較的弱い温度」というような漠然として抽象的な表現から、それが技術的に如何なる性質ないしは程度の温度を意味するのか全く把握しがたいことは、本件審決の指摘するとおりであり、それが摂氏一〇〇度から四〇〇度の間の温度を意味し、その使用により原告主張のような作用効果を挙げうることは、これを認めるに足る証拠は全く存しないから、右主張の採用しうべき限りでないことは、多くの説明を要しないところである。
(むすび)
以上説示したとおり、その主張の点に事実誤認の違法があることを前提に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由がないものというほかはないから、これを棄却する。(三宅正雄 杉山克彦 楠賢二)