東京高等裁判所 昭和37年(行ナ)217号 判決
〔判決理由〕
(本件審決を取り消すべき事由の有無について)
二本件審決が、本願商標をもつて、引用商標との対比関連において、商品の誤認混同を生ぜしめるおそれのあるものとしたことは、前掲当事者間に争いのない本件審決理由の要点に徴し明らかであるが、右は判断を誤つたものといわざるをえない。これを詳説するに、本願商標と引用商標とを対比考察すると、両者は、本件審決もいうように、その外観、及び称呼の点において相違することはいうまでもないが、観念の点においても、同一又は類似の標章ということはできないことは、その構成(当事者間に争いがない)から明らかなところである。すなわち、引用商標は、「デビスカップ」、あるいは「デビス杯」として広く一般に知られている「世界庭球選手権試合の優勝杯」の観念を生ずるものと認められるところ、本願商標は、その図形の点を考慮の外においても、なお、「デビスキング」の観念(その実体が何であるかは、少ずしも明白でないが、少くとも、いわゆる「デビスカップ」の観念とは別異のものであることは、明らかである。)を生ずるにすぎず、もとより引用商標と観念の点においても同一又は類似の関係にあるものと認めることはできない。しかも、両商標は、その語頭にある「Davis」(又は「DAVIS」)の文字を共通にしてはいるがその後半部分、すなわち、引用商標における「CUP」及び本願商標における「King」の各文字は、単に英語として異る意味を有するにとどまらず、現に今日においては「カップ」あるいは「キング」の日本語としても、社会通念上、おのずから明確な差異を有することは、ほとんど多くの説明を要しないほど明白な事実であるから、本願商標と引用商標とは、たとえそれぞれの語頭の「Davis」の文字を共通にするとはいえ、世人一般が両者を役此混同するとは考えられないところといわざるをえない。これを要するに、両者は、その外観上、称呼上及び観念上、同一又は類似の商標ということができないばかりでなく、彼此混同を生ずる、いわゆる紛らわしい商標ということもできない。被告指定代理人は、この点につき、本願商標からは「デ杯戦の王者」の観念を生じ、また、「Davis」の文字は「デビスカップ」を想起させるものである旨主張するが、この主張は、当裁判所の到底採用し難いところである。けだし、この主張を裏づけるに足る資料は一つとして存在しないばかりでなく、一般の社会通念からいつても、右主張を肯定することは、きわめて困難であると認めざるをえないからである。引用商標から、本願商標の出願当時、取引の実際において、「デビス」の称呼が生じていた旨の<証拠>は、証人Mおよび同Yの各証言に照らし、にわかに措信し難く、したがつて本願商標が引用商標と観念において類似し、あるいは、両者が商品の誤認混同を生ずるおそれがあるものとすることができないのは、いうまでもない。
叙上のとおりであるから、引用商標が本件登録異議申立人である美津濃株式会社のテニス用ラケット等における商標として周知著名であるとしても、本願商標を同じくラケット等の運動具に使用した場合、その商品について混同誤認を生ずるおそれがあるものと認めることはできない。
(むすび)
三以上説示したところから明らかなように、本願商標をもつて、旧商標法第二条第一項第十一号に該当するとした本件審決は判断を誤つた違法があるものといわざるをえないから、それを理由に本件審決の取消を求める原告らの本訴請求は、正当なものということができる。
よつて、これを認容する。
(三宅正雄 荒木秀一 石沢健)