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東京高等裁判所 昭和37年(行ナ)69号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無について)

二 原告は、本件審決を取り消すべき事由として、本件審決は、本願考案と引用例記載のものとの構造上及び作用効果上の差異を看過誤認し、両者は、構造及び作用効果において一致するとした点において判断を誤つたものである旨主張するが、この主張は理由がないものといわざるをえない。すなわち、まず、本願考案と引用例記載のものとの構造の点についてみるに、本願実用新案公報及び引用例によると、本願考案の螺旋体1は、合成樹脂、セルロイド又は硬質ゴムのような熱可塑性弾性物質よりなり、これを右螺旋体と同一又は類似の合成樹脂又はゴム等の熱可塑性弾性物質よりなる蛇腹状ホース体2の外面の壁2'の頂部に巻着して固定したものであるに対し、引用例のものにおいては、補強条片と、チューブ体(ホース体)とが当初より一体的に軟質ゴムで形成されていること明らかであるが、本願考案の螺旋体及び蛇腹状ホースは、いずれも同一又は類似の熱可塑性弾性物質より構成されているものであるから、これを引用例記載のもののように、当初より一体として形成するか、あるいは本願考案のように別体のものを巻着して一体的に固定するかということは、単に製造ないし加工工程上の問題にすぎず、構造そのものとしては、両者は、ともに、蛇腹状ホースの外面の襞の頂部に、熱可塑性弾性物質よりなる螺旋体を、一体的に形成した点において、一致するものというべく、この認定を左右するに足る証拠はない。原告は、本願考案においては、螺旋体の方が蛇腹状ホースよりも弾性の強いものであるに対し、引用例記載のものにおいては、蛇腹状チューブと補強突条とは、まつたく同質であるのみならず、チェーブの蛇腹部の断面積が補強突条のそれに比して著しく広い旨主張するが、本願考案の螺旋体及び蛇腹状ホースは、ともに、熱可塑性弾生物質より構成されていることは、当事者間に争いのない本願考案の要旨に徴し明らかであり、前掲甲第一号証には、螺旋体には線金を合成樹脂で被覆したものを使用する場合もある旨説明されているが、これは本願考案の一つの実施の態様を示したものにすぎないこと、その説明自体に徴し明らかであるから、その点をとくに考案の要旨としていない本願考案において、螺旋体の方が蛇腹状ホースの部分よりも常に弾性の強いものであると認めることはできない。また、引用例記載のもののチューブの蛇腹部の断面積が補強条片部分のそれに比して、著しく広いとしても、もとより、単なる程度の問題にすぎないから、原告の前示主張は理由がないものというほかはない。

次に、両者の作用効果の点についてみるに、両者は、ともに、内部の吸気作用による低圧により、チューブの径が収縮凹入することがなく、ホースの内部に吸引された塵埃が引かかつて溜ることがないようにし、また、ホース縦長方向における伸縮力を補強するという作用効果を奏するものであることは、その構造自体から明らかであり、結局、両者は、その作用効果においても一致するものと認められる。原告は、本願考案においては、蛇腹状ホース2の保形及び伸縮力が、螺旋体により強力に補強されているのに対し、引用例のものは、蛇腹状チューブと補強条片とが、全く同質のものであることにより、補強条片の保形、補強効果は、蛇腹部の保形、補強効果に比し僅少であり、右補強条片は主として、蛇腹状チューブ外面が他物と摺接した際に、その磨滅を防止する効果を有するにすぎず、本願考案の螺旋体が有する顕著な保形及び伸縮力の補強という作用効果は、引用例のものの補強条片には期待しがたい旨主張し、引用例のものの補強条片が蛇腹状チューブと当初より同質により一体的に形成されるものであることは、前認定のとおりであるけれども、引用例のものは、ガスマスク等に使用される伸縮可撓性チューブに関するものであり、その構造に徴すれば、磨滅に対する補強だけを目的とするものではなく、その補強条片は、当然に蛇腹部部分の保形及び伸縮復元力を補強する効果を有するものと認めるを相当とするから、原告の右主張は理由がない。また、原告は、本願考案においては、螺旋体と蛇腹状ホースとを別体としたことにより、引用例記載のものに比し、容易迅速かつ安価に製造することができ、しかも、螺旋体を種々の断面形状に成形することができる旨主張するが、本願考案のこの点の効果が引用例に比し、格別著しいものがあることを認めるに足る証拠はないから、原告の右主張も採用に値しない。

(むすび)

三 以上説示したとおりであるから、その主張の点に認定ないし判断を誤つた違法があるとして、本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由がないというほかはない。よつて、これを棄却する。

(三宅正雄 武居二郎 布井要太郎)

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