東京高等裁判所 昭和38年(ツ)171号 判決
原審は「固定資産税の支払は、本件調停の附帯条項に過ぎず、本来は右の不払があつたからといつて、本件調停調書を債務名義として強制執行をすることができない性質のものであり、ただその支払が契約解除撤回の条件とせられたため右債務名義との関係を生じたに止まり、右条件とせられた固定資産税額も比較的僅少であるばかりでなく、右固定資産税は本件土地の隣接地(訴外苅部れん所有)と共通に課税されたため、本件土地に対する課税額を確定しえず、被上告人は上告人に対し被上告人の負担すべき固定資産税の確定を求めたに拘らず、上告人はなかなかこれに応ぜず、また昭和三十三、四年ごろまで被上告人に対し右固定資産税金の請求もせず、被上告人が右税金として昭和三十三、四年ごろ一万円を昭和三十三年ころ二万円をそれぞれ上告人に提供したがいずれも受領を拒否された」等の事実を認定し、右のような計算の不明確なまゝに推積した僅少の固定資産税の負担を理由として、上告人が本件土地売買契約解除の効力を主張するのは、不当な利益追及を目的とする権利の行使であつて、社会性に反し権利の濫用として許されない、との判示をなしているのであるから原審はたんに固定資産税の金額ばかりでなく、その支払をしなかつた経緯をも十分に斟酌して右のような判断をなしたものであることが明らかである。また所論のように、上告人とその訴訟代理人石田弁護士との間の報酬契約が、右代理人が相手方である被上告人から金銭の支払を受けた後、上告人から約定による報酬金の支払を受ける趣旨のものであるとの事実は、原判決の確定していないところである。原判決の適法に確定した事実関係のもとにおいて、上告人が本件土地売買契約解除の効力を主張することは、原審が判断しているように不当な利益追及を目的とする権利の行使であつて権利の濫用であると解し得られないものではない。
(村松 江尻 杉山)