大判例

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東京高等裁判所 昭和38年(ツ)37号 判決

つぎに、上告人は、返還時期の定めのない使用貸借における使用収益をなすに足りる期間の経過については、当事者双方に存する諸事情の存否についても顧慮した上で、これを決すべきであるのに、原判決が右の点については何らの審理を尽さず、単に時間的基準のみをもつて、使用収益をなすに足りる期間を経過したと判示したのは、民法第五百九十七条第二項の解釈適用を誤つた違法であるのみならず、審理不尽、理由不備の違法があると主張する。

原判決が、上告人夫婦が本件家屋に居住し始めた昭和二十六年秋から明渡の請求を受けた昭和三十四年春頃まで、七年半の歳月を経過しているから、使用収益をなすに足りる期間を経過したものであると判示していることは所論のとおりである。しかしながら存続期間の定めのない使用貸借においては、貸主は借主に対し、使用収益するに足りる相当な期間経過後は、何時にても目的物の返還を請求し得るのであつて、上告人主張のように当事者双方に存する諸事情を比較考量しなければならないものではない。上告人が前記七年半の間自ら本件家屋の使用収益をなしたものであることは、前段判示のとおりであり、しかも、右期間は使用収益するに十分な期間といえるから、原判決がこれをもつて、使用収益するに足りる期間を経過したものと判断したのは正当であり、上告人主張のような法令違背、審理不尽、理由不備の違法はなく、論旨は理由がない。

(村松 杉山 菅本)

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