東京高等裁判所 昭和38年(ネ)2500号 判決
控訴人が昭和三六年三月二九日邦真方に同年一月ないし三月分の賃料一、六二〇円を持参してこれを提供したこと、控訴人が同年四月四日右金額を弁済供託したことは当事者間に争がない。ところで、賃料の弁済期が毎月三日であり、邦真が解除の意思表示をしたのが昭和三六年五月一七日であること前記のとおりであるから、右賃料の提供、供託は、履行期後、解除権行使前の間になされたものというべきである。一般に、債務者は、解除権が行使されるまではその債務の履行をなすことができるけれども、履行遅滞にある限り遅延損害金をもあわせて提供しなければ、その弁済の提供は債務の本旨に従つたものということができない。したがつて、本件において控訴人は本来の賃料のほかこれに対する各月分の履行期の翌日から提供の日まで法定の年五分の割合による遅延損害金をあわせて提供しなければならないところ、控訴人はこの損害金の提供の点についてなんらの主張立証をしていない。してみれば、邦真は右賃料の受領を拒絶しうるものというべく、控訴人のなした弁済の提供、供託は、その効力を生じなかつたものといわなければならない。控訴人の右主張は理由がない。
(牛山 岡松 川嵜)