大判例

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東京高等裁判所 昭和38年(ネ)3126号 判決

その成立について争のない甲第二号証の三、原審での証人菅原憲美の証言(第一、二回)及び被控訴会社代表者本人尋問の結果(第一回)並びに弁論の全趣旨を綜合すると、被控訴会社は、赤字続きで、昭和三十六年六月の決算期においても役員の賞与を計上することができなかつたので、将来被控訴会社の業績が向上して役員の賞与を支出し得るに至つたときは、これは振替える予定で雑勘定として総額金四万六千六百円を計上し、控訴人に対しては振替不能のときは返還を受ける趣旨で仮払金として金二十七万一千七百円を支給したが、その後もいぜんとして被控訴会社の赤字が解消しないので、右仮払金は役員賞与金としての振替がなされないままの状態に有り、控訴人も同年十二月被控訴会社の取締役を退任したものであることが、認められ、他にこの認定を動かし得る証拠はない。簿記学上は、仮払金なるものは、当該勘定の属すべき科目又は金額が確定せず、その内容を示す科目によつて記載することのできないものについてのみ計上され、後日それが確定したときに、当該勘定に振替がなされるものであり、前記認定の控訴人が仮払金として支給を受けた金員は、その実質は賞与金の仮渡しに過ぎないのであるから、被控訴会社の業績が好転しないためこれを正当に支給することが不可能であり、従て、役員賞与金勘定に振替えることができず、しかも、控訴人が既に被控訴会社の取締役としての身分を失つている以上控訴人は、被控訴会社に対しこれを返還すべき義務を負うものといわなければならない。

(村松 江尻 杉山)

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