大判例

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東京高等裁判所 昭和38年(ネ)603号 判決

控訴人等は、仮に債権極度額四百万円を債権額とする代物弁済予約が有効としても、被控訴人の債権額は二百五十三万四千円に過ぎなかつたからこの金額を以て代物弁済予約を完結することは許されない、と主張するけれども、本件代物弁済予約は予約当時に確定していた債権額によるものではなく与信契約に基づき将来確定すべき債権額につき代物弁済の予約をしたものであり、その債権額も極度額四百万円に限定されてはいなかつたことは、引用に係る原判決理由中に示すとおりであつて、このように将来確定すべき債権額につきあらかじめ代物弁済予約をなすことは契約自由の原則上許されるところであり、その場合は後日確定すべき債権額が当初約定された貸付限度額と異ることも当然あり得ることであつて、特にその債権額を当初約定された貸付限度額と同程度の金額とすべき旨の特段の合意があるとか、債権額と貸付限度額又は物件の価額との間の県隔が甚しいため公平を害し、その債権額を以て代物弁済予約を完結させることが公の秩序善良の風俗に反し又は信義則に反する等の場合は格別であるが、本件においては、将来代物弁済の目的とすべき確定債権額を当初約定された貸付限度額四百万円と同程度とする旨の合意があつたことを認めることのできる証拠はなく、かえつて原審証人今西庫次郎の証言によれば、債務者自身本件代物弁済予約当時物件の価額を金四百万円程度と見積つてはいたもののその価額では売ろうとしても売れない状態であつたことが認められるので、将来代物弁済の対象となるべき確定債権額が右貸付限度額四百万円よりも相当低額となるべきことは当事者においても最初から予期していたものと認むべく、本件においては、被控訴人が代物弁済予約完結の意思表示を発した昭和三十四年十二月一日当時の被控訴人の債権額は少くとも元本残額二百五十三万四千円及びこれに対する訴外会社が期限の利益を失つた日の後である同年六月一日以降右十二月一日まで百八十四日間の右債権元金残額に対する日歩五銭の割合による遅延損害金二十三万三千百二十八円合計金二百七十六万七千百二十八円となり、この金額は当初定めた貸付限度額には達しないけれどもその半ばを遙かに超えているのであるからこの程度の金額を以てする代物弁済予約の完結は、当事者の意思に反するものということはできないし、貸付限度額との関係において公の秩序善良の風俗又は信義則に反するものともいえない。又、目的不動産の価額は債権額確定弁済期到来当時の昭和三十四年五月頃は金四百十六万円余であつたが、その後の値上りにより代物弁済予約完結当時には金五百七十七万円に達したこと引用に係る原判決理由中に説示するとおりであるが、確定債権額とのこの程度の差異あることを理由として本件代物弁済予約の完結が当初の予約当事者の意思に反するものということもできない。

(小沢 仁分 池田)

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