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東京高等裁判所 昭和38年(ネ)820号 判決 1963年12月21日

控訴人 葵自動車株式会社

被控訴人 国

訴訟代理人 河津圭一 外一名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事  実 <省略>

理由

当裁判所もまた控訴人の本訴請求を失当と認めるものであつて、その理由は、以下に附加するほか、すべて原判決理由の説示するところと同一であるから、ここにこれを引用する。

控訴人が転売の目的で米国軍人ドナルド・ロー・オニールから同人所有の一九五四年型ビユツク乗用自動車一台(車体番号四A六〇一八四〇一号を譲受けたのが昭和三十二年三月四日のことであり、右自動車が控訴会社代表者古我信生に対する関税法、物品税法違反被疑事件のため差押えられたのが同年九月十八日であるが、このように免税自動車の譲受後六ケ月以上を経過しても、他にこれを転売した際通関手続並びに物品税の納付手続をとれば、(場合によつてはその転得者名義でその手続がなされ、内国自動車として登録されることもないとはいえない。)譲受人に対しては関税法、物品税法違反に問擬しないとする慣行があつたものと認むべき確証はない。従つて本件通達により免税自動車の通関手続について、譲受後十五日間の猶予期間を置き、又右期間経過後であつても通関手続を行わせる取扱をしていたことは当事者間に争がなく、控訴会社代表者古我信生において転売の際その通関手続等を履行すればよいと考えていたとしても、前記のように譲受後既に六カ月以上を経過してもなお譲受人たる控訴会社のために右手続がとられないことは、税関の側からすれば、これを関税等の逋脱を図るものとの疑を懐くのも当然である。されば検察官においてこれを関税法、物品税法違反被疑事件として捜査を開始し、証拠物件として本件自動車を差押えた上、控訴会社代表者古我信生をその被告人として起訴の手続をとつたからといつて、直ちに検察官が前記違法性阻却事由の存在を知り乍ら起訴した過失あるものとはいえない。控訴人の見解には到底左袒することはできない。

以上のとおりであるから、原判決は正当で、本件控訴は理由がないからこれを棄却すべきものとし、民事訴訟法第三百八十四条、第九十五条、第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 堀田繁勝 野本泰 渡辺卓哉)

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