大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和38年(ネ)855号・昭37年(ネ)494号 判決

一、控訴人は、被控訴人が本件土地の上に控訴人の借地権があることを知り、または重大な過失によりこれを知らないで本件土地を取得したものであるから、控訴人はその借地権を被控訴人にも対抗することができると主張するけれども、被控訴人が控訴人主張の様に本件土地の悪意又は重大なる過失による取得者であるか否かは暫らく措くとして、仮に悪意又は重大な過失による取得者であつたとしても、建物保護法第一条は、第三者の善意、悪意を問わないものと解すべきであるから、控訴人がその主張の賃借権につき登記なく又本件土地の上に登記した建物を有しない以上(これらのことは控訴人の自認するところである)その主張の賃借権をもつて被控訴人に対抗し得ないものというべきである。

二、控訴人は、罹災都市借地借家臨時処理法第一〇条民法第一条によりその借地権を被控訴人に対抗できる旨主張する。罹災都市借地借家臨時処理法第一〇条の規定によれば、罹災建物が滅失した当時から引続きその建物の敷地に借地権を有する者は、その借地権の登記及びその土地にある建物の登記がなくても、昭和二一年七月一日から五ケ年以内にその土地について権利を取得した第三者に対して、その借地権をもつて対抗することが出来る旨定められている。

而して本件土地上の控訴人主張の借地権が右法条に定める条件を充たす借地権であることは多言を要しないが、前説示事実によれば、被控訴人は右期間経過後に本件土地を取得したものであるから右法条の適用はない。控訴人は、被控訴人が控訴人の借地権を知りまたは重大な過失によりこれを知らないで土地の所有権を取得したから右法条所定の期間経過後でも控訴人の借地権の対抗を受ける旨主張するけれども、右法条の立法の趣旨は、罹災土地における建物建築の困難性に鑑み、一定の借地権について、一定期間内に限り、建物保護法第一条の規定に拘らず、地上建物の登記がなくても第三者に対抗することができるものとして、借地権者の保護を図つたものであり、又それ以上に出でるものではない。従つて、右法条を控訴人主張の様に同法条所定の借地権者は、悪意又は重大な過失ある第三者に対しては地上建物の登記がなくてもその借地権をもつて対抗することができる趣意に解釈することは困難であるといわなければならない。罹災都市借地借家臨時処理法第一〇条の規定をかく解すべきことは、民法第一条の規定を併せ考えても同様である。控訴人の主張は要するに控訴人独自の見解を述べているに過ぎないというべきである。よつて控訴人の右抗弁も理由がない。

(小沢 池田 中田)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!