大判例

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東京高等裁判所 昭和38年(ラ)50号 決定

原審判に対する不服の要旨は、扶養の請求をする父および母(以下単に申立人らとして引用する。)と、子である抗告人とはただ食事を別にしているだけで、申立人らは、自由に抗告人の居住部分に出入しており、完全に別居しているわけでもないのに、恰かもそうであるかのように抗告人から申立人らに対する扶養として金銭の支払をなすべき旨を命じたことは、不当であり、また抗告人の階級としては別居生活をすることは不能であるが、かりにそうでないとすれば、まず完全な別居体制をとらしてから扶養を命ずべきであるのに、そのことなくして支払を命ぜられた金額が多きに失する、というにあるものの如くである。よつて、原審における審問および事実の調査の結果をまとめて考えると、申立人らと抗告人その他との親族関係、その過去および現在の生活環境、それぞれの資産および収入等については、原審判理由の1ないし4および7に判示されているような諸事実、(更に約言すれば、木工職を生業とする抗告人と申立人父の各夫婦(抗告人の子三人を含む。)は、同一家屋内に室を別にし一定の区分で同居しているが、既に十数年折り合いのできない状況にあつて、昭和三三年九月頃からは日々の食事の仕度を別にするなど生計を各別にして来ており、申立人らのみぎに対する需要は、抗告人その他の子の仕送りによつて支弁されて来たこと)を認めることができる。抗告人は、抗告人と申立人との「階級、職業、財産、経歴、学歴」等のゆえに、完全に同一世帯員としての同居の生活が望ましいと主張し、扶養権利者と扶養義務者との文字どおりの共同生活(扶養義務者の一人である抗告人が、扶養権利者である申立人らを引取り扶養すること)が、抗告人の生活事情から考えても、理想の形として望ましいとすることは、一応もつとものことに思われる。しかし、他面抗告人夫婦と申立人ら夫婦との間の前判示にみられる生活環境と、今日までの日常経過とを併せ考えるとき、世帯を構成する各人の生活感情の対立を度外視して抗告人の期待する円満な共同生活を望むことは到底できないことである(申立人らが抗告人の夫婦との従来からの交渉経過にかんがみて、その間の摩擦を避けるべく、食生活その他可能な限りの日常生活を別にしようと計り、そのための扶養料を請求しようとする意見と、こうした規制を一切なくして、一体としての生活を望むとする抗告人の意見とが対立しており、その対立の解消を期待できることが認められる資料がない)。原裁判所が抗告人による申立人らの引取扶養に代えて、抗告人に申立人らに対する扶養料の支払を命じたことは、みぎのような観点において是認されるのであつて、これと反対の見解に出た抗告人の主張は、当裁判所もこれを採らない。そうして扶養料の数額についても原裁判所が申立人らの需要、抗告人の資力、その他前判示の事情のもとにおいて、申立人ら両名につき月額金一万円の生活費を必要と認め、そのうち抗告人において金五千五百円の支払義務を肯認したことは、一件記録にあらわれた資料から考えて相当であつて、この点についての抗告人の主張も理由がない。

(梶村 中西 室伏)

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