大判例

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東京高等裁判所 昭和38年(行ナ)95号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無について)

二 原告は、本件はその主張の三点において判断を誤つた違法のものであるから、取り消されるべきである旨主張するが、この主張は、いずれも理由がないものというほかはないこと以下説示するとおりである。

(一) 原告は、まず、本件審決がプラスチック材料につき成形前第一引例に示されたような予備乾燥を行なうことは、本願出願当時における一般原則であるから、ポリカーボネートの成形に当たつてこのような予備乾燥を行なうことは当業者にとつて容易であるとしたことは、当時の技術常識に反すると非難するが、この非難は当を得たものとはいいがたい。すなわち、本件審決は、本願発明と第一引例記載の技術内容とを比較すると、両者は成形用可塑材料を予め十分乾燥してその水分含量をできるだけ少なくしておく点において一致し、しかも、第二引例にも明らかなようにポリカーボネートが成形物品の製造に用いられる熱可塑性材料として本願出願前公知であるから、プラスチック材料について一般に示されている第一引例の予備乾燥をポリカーボネートの成形に当たつても行なうことは当業者にとつて容易なことであるとしているにすぎないことは、前掲当事者間に争いのない本件審決理由の要点に徴し明らかであり、その限りにおいて、その判断を誤りとすべき理由は見出しえない。(プラスチック材料であつても、その含水量の如何により予備乾燥を必要としないもののあるべきことは技術常識上異とするに足りないことは容易に窺知しうるところであるが、このことは本件審決の前示判断と格別係わりを有するものではない。)。

(二) 次に、原告は、本件審決は第二引例にポリカーボネートの含水率が示されているとしたことは事実の誤認である旨主張する。しかして、第二引例においては、ポリカーボネートの吸水(湿)率が、一定条件下において、0.01%であることを示していることは、まさに原告の指摘するとおりであるが、吸水率は、実際は、ある定められた雰囲気条件下におかれた物質がどれだけ湿分(水分)を吸収含有しているかという状態を示す数値で現わされ、その数値の示す内容は含有率そのものであること及び両者の数値はその絶対値においても近似していることは明らかであるから、第二引例記載から、当業者が含水量が約0.01%以下のポリカーボネートを得ることに格別の困難があろうと考えることはできないから、本件審決が本願発明は、「約0.01%以下の含水量を有するポリカーボネート」を成形する点において当業者の容易に想到しうるところである旨判断したことは、結局正当であるということができる。なお、原告は、第二引例に示されたポリカーボネートは、本願発明が成形材料であるのと異なり、成形品であるから、第二引例は本願発明と無関係である旨主張する。しかして、第二引例において報告されたポリカーボネートの物理的特性の測定についてそのフイルム又は薄板が使用された事実を肯認することができるが、この事実から直ちにそのポリカーボネートが成形材料ではないと論断することができないことは、明細書中においても、フイルム状をしたものを成形材料としている事実に徴しても明らかなところである。

(三) 原告は、本件審決が本願発明によつて得られる機械的性質の改善も格別顕著なものとは認められないとしたことをもつて事実の誤認であると主張するが、これを肯認するに足る適確な証拠はない。すなわち、その採用した技術的手段が第一引例及び第二引例から当業者の容易に想到しうる程度のものであること前認定のとおりである本願発明において、全証拠資料によるも、それが存在することによつて、旧特許法所定の特許要件を具備するというに値するような格別顕著な作用効果があると認めることはできない。

(むすび)

三 叙上のとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法があるとする原告の本訴請求は理由がないものというほかはない。よつて、これを棄却する。

(三宅正雄 土肥原光圀 武居二郎)

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