大判例

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東京高等裁判所 昭和39年(ネ)1972号 判決

一、右事実によれば、訴外安全投資株式会社は昭和三十四年十二月頃破産会社に対する貸金債権が約五千万円になつたことにより、かねて破産会社から預つていた本件土地の権利証を利用し、本件土地を右債権の担保に供しようと考え、その頃破産会社より借受けた同会社代表者の印鑑を冒用して、擅に本件土地に関し、売買予約並びに賃貸借予約を原因としこれが請求権保全の仮登記を申請する権限を付与する旨の破産会社名義の委任状(甲第三号証の二)を作成し、権利証その他の必要書類と共に所轄登記所に提出、申請の上被控訴会社を権利者とする本件仮登記をなしたものであることが認められる。

然らば本件仮登記は、控訴人のその余の主張について判断するまでもなく、破産会社の意思に基ずかずになされた、実体上の権利関係にも合致しない無効の登記として抹消さるべきものであるということができる。

もつとも被控訴人は、本件土地の所有権は現在破産会社にないから、控訴人は被控訴人に対し本件仮登記の抹消を求める利益はない、と主張し、成立に争いのない乙第一号証、乙第二号証の一乃至三並びに原審証人渡辺一夫、同河野善博、同平本方及び原審における被控訴代表者本人の各供述を綜合すると、破産会社は昭和三十五年七月十九日豊島簡易裁判所において前記訴外会社と和解し、同会社に対する債務金七千五百万円の代物弁済として本件土地の所有権を同会社へ譲渡し、同会社はさらにこれを訴外松田しづに譲渡して破産会社より直接同人に所有権移転の登記が経由され同人の所有名義になつていることが認められるのであるが、被控訴人に対する本件仮登記の抹消請求権は、破産会社が右土地の所有権を訴外会社へ移転した後にもなほ、存在を許されない登記の抹消を求める利益を失うものではないものというべきである。

二、しかも成立に争いのない甲第六号証の一、二によれば、控訴人は本件土地の現所有名義人松田しづに対し、同人への所有権移転登記を否認してこれが引渡を求める訴を提起し(第一、二審において勝訴していることが認められるので)右訴訟の結果によつては本件土地は破産財団に復帰することとなり、且つ、成立に争いのない甲第二号証の一ないし三によれば訴外会社への所有権移転についてもその旨の登記は経由されていず、控訴人に対する対抗要件を具備しておらないことが認められるから、本件土地は破産財団に属する財産となるので、控訴人において本件仮登記の抹消を求める利益はこの点においても存するものというべきである。

(毛利野 平賀 安国)

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