東京高等裁判所 昭和39年(ネ)2055号 判決
金銭債務の弁済のため同額の小切手を提供しても、銀行の自己宛小切手または銀行の支払保証のある小切手等支払の確実なものでないときは特別の意思表示または慣習のない限り、債務の本旨に従つた提供とはならないが特別の意思表示または慣習が存在するときは、債務の本旨に従つた提供と解すべきところ、被控訴人の控訴人に対する賃料の支払が従来通常被控訴人提出の小切手で行われていたことは、原判決理由中において挙示された証拠の外、当審証人新堀重剛の証言によつてもこれを認められるのみならず、仮に通常、小切手で支払が行われていなかつたとしても、少くとも本件の場合、控訴人において、被控訴人が提供した小切手を異議なく受取つていることは前顕各証拠により認められ、また一件記録によれば供託の場合を除けば、本件の直前にも小切手で支払がなされていることが認められるから、以上を綜合すれば、本件の場合右小切手による賃料の支払を被控訴人も暗黙のうちに承認していたものというべく、即ち小切手による支払を認める被控訴人の黙示の意思表示があつたものと解するのが相当である。よつて右被控訴人のなした小切手の提供は、債務の本旨に従つた弁済の提供ということができる。
(坂本 池田 小山)