大判例

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東京高等裁判所 昭和39年(ネ)2214号・昭39年(ネ)2184号 判決

前記(一)の認定事実によると、第一審被告野仲が本件(三)建物の所有権を取得したのは、第一審被告野仲の立替金債権担保のため本件(三)建物を目的としてされた譲渡担保契約にもとづくものである。そして、本件におけるように土地とその地上建物とを所有する者が、債務を担保するため地上建物について譲渡担保契約を締結する場合においては、特別の事情がない限り、債権者と債務者(土地所有者)とは債務者の債務不履行を停止条件とする建物敷地の賃貸借契約を締結したものと認めるのが相当である。けだし、債権者は、債務者の債務不履行によりいよいよ債権回収の措置をとらなければならない場合には、債権回収の方法として、債権の弁済に代えて債権者が目的建物の所有権を確定的に取得するものと定められている場合であるにせよ、あるいは債権者が目的建物を評価取得し、またはこれを処分して債権関係を清算するものと定められている場合であるにせよ、建物をしてその本来の経済的効用を全うさせる要素である敷地利用権を取得することを(建物の処分がされる場合には、さらに、右利用権の譲渡に対する承諾を得ることをも)欲し、債務者もこれを納得し、しかも、その敷地利用権としては使用借権のように債務者の一方的意思により比較的たやすく消滅させることのない(さらには債務者の承諾により譲渡性を賦与される)賃借権が選ばれるのが普通であるとみられるからである。そして、前記のように理解することが、当事者の通常の意思に合致し、取引一般の実情に添うものということができるであろう。

仮りに、第一審原告と第一審被告野仲とが本件(三)建物の譲渡担保契約を締結したときに、右建物の敷地について前記趣旨の賃貸借契約が成立したと認めることができないとしても、本件(三)建物の譲渡担保契約の内容および右契約が締結されるにいたつた前記認定の事情のもとにおいては、すくなくとも、第一審原告は、第一審被告野仲のために、本件(三)建物の敷地について賃借権を設定してやる義務を負つたとするのが信義則に適合するものとすべきである。このような義務を負う第一審原告が、本訴において、賃貸借の内容をきめるために第一審被告野仲と折衝をすることなく、かえつて同被告が本件(三)建物の敷地の使用権を有しないことを主張して、これを不法占有ときめつけ、第一審被告野仲に対し、本件(三)建物を収去して、その敷地を明け渡すべきことを請求するのは、信義則に照らし、とうてい許容することができない。

(新村 中田 蕪山)

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