大判例

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東京高等裁判所 昭和39年(ネ)2310号・昭39年(ネ)2293号・昭39年(ネ)2323号 判決

右認定の事実からすると、第一審原告ら各会社は、田島一郎が自己の資産の保全および運用をはかろうとして設立した会社であつて事実上同人の支配下にあり、ことに前記各売買契約締結のころには、同人の方針に反対する者および同人の一族以外の者が共同代表取締役の地位を去り、田島一郎および同人と内縁関係等特殊な身分関係にある者のみが共同代表取締役に就任しており、田島一郎を含め各共同代表取締役とも現実に実質的な共同代表を行う意思または能力を欠いており、各会社の業務執行はもつぱら田島一郎によつて主宰され、同人が他の共同代表取締役の印章を自由に使用しており、他の共同代表取締役は単純に同人に随従するかあるいは会社の運営に関与していない状態で、結局共同代表の定めがあつても実際には有名無実であつたということができる。

そのうえ、前認定のように、第一審被告趙純が、前記各売買契約の締結に当り、顔をみせない三好明および近藤信子の意思を確かめるため、田島一郎に右両名をも連れてくるように求め、そのうち三好明の来訪を得て同人の意思を確認し、また近藤信子については田島一郎から肺結核で来られないが内妻で間違いない旨の釈明を得てこれを信用したこと、前記各売買契約締結の時から昭和三四年一一月一九日本訴提起までの約五年間に、第一審原告らから第一審被告らに対し、右各契約が共同代表の定めに反し無効である旨の主張がなされた形跡がないこと等の諸事情を併せ考慮すると、本訴において第一審原告らが第一審被告らに対し、本件各売買契約が第一審原告ら各会社の共同代表の定めに反し無効である旨主張することは、共同代表の定めはあるが有名無実であり、共同代表が実質的に行われることを期待しがたいような実態の会社が、共同代表取締役全員の意思を確認しようとしたが、もつともと思われる会社側の弁解の下に共同代表取締役全員の意思の合致があるものと信じて会社との間に契約を締結した相手方に対し、その契約締結後約五年を経過した後に共同代表の定めに反していたとして契約の無効を主張するものであつて、信義則に照らしとうてい許しがたいところというのが相当である。

(小川 小林信 川口)

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